韓国「尹錫悦」新大統領、「日米との関係強化」「脱中国」路線の危うさ
Balancing China and the US
尹は今後、韓国の安全保障を経済的、軍事的、地政学的に強化するため、民主的で同じ考えを持つ諸国への関与を深めていくだろう。具体的には、ダメージを受けづらいサプライチェーンの多国間ネットワークの構築や、民主主義国間における5Gなどの技術協力、気候変動や途上国開発、世界規模の公衆衛生問題について協働していくことになる。
こうした関与は中国との関係を断ち切ることを意味しないが、尹はアメリカやその他の民主主義国とイデオロギー的に歩調を合わせ、協力体制を可能な限り促進するつもりだ。
加えて米政権からは、新疆ウイグル自治区や台湾、香港などにおける中国の振る舞いに対してより断固とした立場を取ること、また中国への輸出や経済依存の現状について大きな圧力を受けている。
対日関係にも変化が
文政権の新南方政策は、アジア太平洋へのさらなる関与政策の一環として継承されるだろう。尹にとって北朝鮮は文政権ほど重要性が高くないため、より広域においてアメリカと今までよりも直接的に協働していくことになる。尹は日米豪印戦略対話(クアッド)に関する韓国の役割に大いに期待しており、いずれ韓国もクアッドの一員になることを目指すだろう。
韓国が民主主義陣営にここまで接近してきている現状は、かつて韓国にとって北朝鮮が最優先課題であり、文が南北関係の向上を目指す際に他国との関係性を鑑みなければならなかったときには、顕著には見られなかったことだ。
尹はまた、東アジア地域におけるアメリカの主要同盟国、つまり日本との安全保障関係を強化したいとも述べている。対日関係の強化は緊張関係にあるときには難しかったが、中国との関係が緊迫していくなかでは、長期的に見れば韓国の安全を根本的に高めることにつながり得る。
文政権下では、韓国の中国依存を減らす長期的な試みが行われてきた。この脱中国路線は今後も続くだろうし、強化されるかもしれない。それでも、現実問題として韓国がすぐに経済方針を見直すことは不可能だ。
中国を激怒させることは、韓国経済に破滅的な結果をもたらす。2017年、韓国にTHAAD(高高度防衛ミサイル)を配備したことで中国が韓国に経済制裁を科し、韓国経済が大打撃を受けたことからも明らかだ。尹は韓国の安全保障強化のためTHAADシステムを強化することは考えられるが、その際には中国からの経済的締め付けを覚悟しなければならないだろう。