韓国「尹錫悦」新大統領、「日米との関係強化」「脱中国」路線の危うさ
Balancing China and the US
民主主義陣営との連携を強化し、自由経済圏におけるサプライチェーンの中心地として韓国を機能させることが尹のビジョンかもしれない。
だが現実的には、韓国経済を中国から遠ざけて国内や経済連携国における産業の拠点化を進める生産体制の構築は、数十年とは言わなくとも何年もかかるプロセスだ。経済成長を犠牲にすることなしに中国への依存度を直ちに下げるには、中国経済の影響はあまりに大きすぎる。
韓国経済は中国との継続的な貿易の拡大に依存しているが、このパターンを変える必要があるかもしれない。だが、この方針を変えることや経済依存度を下げることは、経済的にも政治的にも代償を払うことになる。それを補償する十分な政治的・経済的資本があるとも限らず、およそ中国への経済依存度を下げる処方箋は見当たらない。
もっとも、エネルギーやマイクロチップ、医療品など主要な産業や商品への中ロの影響力を回避するための短期的な方策はあり得るが。
中国の影響力と韓国のサプライチェーンにおける中国の重みを削ぐことは、中国に対する否定的な国内世論に合致するものだ。こうした感情の高まりは、ウクライナに侵攻したロシアを中国が支援しているとみられているからだけではない。
そのため中国には今後、従来よりも攻撃的に主張する韓国との外交が待っているだろうが、韓国は短期的には中国との貿易で多くを失う余力はない。
中国からの報復行為は不可避
とはいえ、中国から罰としての批判や報復行為に直面することを避けられそうにない。新疆ウイグルや香港、台湾情勢など、中国が内政問題であると主張してやまない問題をめぐって韓国がアメリカに同調した場合は特に、だ。
尹は、少なくとも言葉ではアメリカと自由主義陣営の側に立つ。尹が韓国外交の方向性を変える心意気であることに疑いはないが、それでも身動きは取れまい。
自身のイデオロギーに対する思いと、中国に対峙することを求めるアメリカからの圧力、その一方で経済成長のために中国との安定した貿易関係を保たなければならない。貿易依存度の高さを考えると、尹の選択肢は狭まる。
それでも、次期政権の対米外交と自由主義陣営における韓国の取り組みには(意欲的であろうがなかろうが)期待できる。韓国国内における反中世論が継続的に強いことに加え、ウクライナ侵攻に対する中国の親ロ的な立場や、中国の韓国への圧力を加味すればなおのこと、韓国の西側へのコミットはさらに深まる。
中国への経済的・政治的な依存度を下げる上では超党派的な支援もあり得るだろう。だが、そうなれば韓国は再び経済的現実に直面しなければならない。
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