ロシア軍「原発攻撃」の衝撃 各国の建設計画に慎重論も
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ロシアがウクライナにある欧州最大級のザポリージャ原発を砲撃・制圧したことで、各国の政策担当者や企業は、気候変動対策として原子炉を建設する計画に対してより慎重な態度になるはずだ――。写真はザポリージャ原発。2008年6月撮影(2022年 ロイター)
ロシアがウクライナにある欧州最大級のザポリージャ原発を砲撃・制圧したことで、各国の政策担当者や企業は、気候変動対策として原子炉を建設する計画に対してより慎重な態度になるはずだ――。原子力の安全性に関する複数の専門家は4日、こうした見方を示した。
ロシア軍は4日にザポリージャ原発を手中に収めたが、それまでに激戦が展開され、原発の研修施設で大火災が発生。火災は消し止められ、原子炉は問題ないと職員が宣言したものの、原発は戦時の攻撃にもろく、深刻な放射能漏れが起きる危険性があると世界中に警鐘を鳴らす形になった。
米国の非営利団体、「憂慮すべき科学者同盟(UCS)」の原子力安全問題担当ディレクター、エドウィン・ライマン氏は「原発プラントにおいて、自然災害だけでなく人為的な災害からも守る措置を講じる必要性について、もっと深刻に受け止めなければならない」と訴えた。
グリーンフィールド米国連大使は4日の国連緊急特別総会で、ザポリージャ原発への攻撃を「信じられないほど向こう見ずで危険だ」と非難し、ウクライナだけでなくロシアや欧州全土の人々の安全を脅かしていると主張。在ウクライナ米大使館は、ロシアの原発攻撃を「戦争犯罪」と糾弾している。
別の非営利団体、核不拡散政策教育センター(NPEC)のヘンリー・ソコルスキー所長は、ザポリージャ原発攻撃は原子力産業全体に逆風となったと指摘。「ウクライナの原子炉は、直接打撃を受けなかった。(しかし)原子炉が軍事攻撃を受けた場合の脆弱(ぜいじゃく)性を各国が考慮に入れた場合、今後原子力発電そのものが、もっと大きな痛手を被るだろう」と述べた。
業界は強気
発電に伴う温室効果ガス排出量が実質的にゼロとなる原発は近年、温暖化に取り組む各国政府にとって推進の動きが加速している。世界原子力協会(WNA)によると、現在建設中の原子炉は58基、計画段階は325基に上る。計画の多くは東欧地域だ。
米政府は昨年11月、ニュースケール・パワーが同社製小型モジュール原子炉(SMR)のプラントを建設することでルーマニアと契約を交わしたと発表。この合意によって「SMR開発の世界的競争で米国の技術が先頭に立つ」ことになると付け加えた。