ロシア軍「原発攻撃」の衝撃 各国の建設計画に慎重論も
ニュースケールは先月、ポーランド企業との間でも2029年までにSMRプラントを建設する契約に調印した。発電時に大量の温室効果ガスを排出する石炭への依存脱却を狙うポーランドの取り組みの一環だ。
ニュースケールの広報担当者は、ザポリージャ原発が攻撃された事態について「原子力エネルギープラントの頑健さや十二分な安全性が改めて浮き彫りになった」と述べ、同社の技術はさらに安全性が高いと強調した。
今年1月にはウェスチングハウス・エレクトリックが、ポーランド企業10社による6基の加圧水型原子炉「AP1000」建設に向けて協力する協定に調印した。
また、同社がポーランドのエンジニアリング大手・ラファコとの間で、ウクライナやスロベニア、チェコで原発プラント建設を模索していくとする覚書も締結している。
ウェスチングハウスの広報担当者は「原子力エネルギーはウクライナや世界中で、安全かつ炭素ゼロの電源となっている」と話した。
リスクを伴わないエネルギーはない
原発を支援しているワシントンのシンクタンク、サードウェイは、気候変動問題の深刻化により、世界はたとえリスクがあろうとも、この先数十年のうちに原子力エネルギーを急速に拡大していかなければならないと訴える。
気候変動とエネルギーを担当するシニアバイスプレジデントのジョシュ・フリード氏は「リスクを伴わないエネルギーなどない。(ロシア大統領の)プーチン氏がダムの破壊や原発攻撃で無数の人々を殺害しようと思えば、できたはずだ。だが、原発プラントは信じられないほど安全だというのが現実だ」と言い切った。
米国の業界団体、原子力エネルギー協会(NEI)はロイターに、原子炉は安全だと信じており、ロシアのウクライナ侵攻は欧州が原子力発電能力を拡大する必要性を高める方向にしか作用しないとの見解を表明した。ロシアは現在、欧州の発電所向けの主要な天然ガス供給者だ。
NEIの政策動向・公共問題担当シニアバイスプレジデント、ジョン・コテック氏は「過去数週間の悲劇によって、米国と協力して次世代型原子力エネルギー開発に取り組むことへの関心は、高まる一方になる」と自信をのぞかせた。
ただ、UCSのライマン氏は、新型原子炉が非常に安全で、最低限の防衛措置を講じれば実質的に世界のどこにでも導入できるという業界の説明は「いかにも口先だけの当てにならない話」だと切り捨てた。
(Timothy Gardner記者)
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