ボランティア集団の戦況分析「オープンソース・インテリジェンス」が、情報戦を変えた
オープンソース・インテリジェンスで有名な英「ベリングキャット」のロシア-ウクライナ・モニターマップ bellingcat.comより
<かつて戦局の情報収集といえば、諜報機関の独壇場だった。いまやオンラインの地図やSNSの動画をもとに、有志チームや専門家個人が真相を導き出している>
有志集団の力で情報を検証し、価値ある新たな事実を読み解く手法は、「OSINT(オシント:オープン・ソース・インテリジェンス)」と呼ばれる。既報のニュース記事や公開されている衛星画像、ひいては一般のユーザーがSNSやYouTubeなどに投稿した動画などを大規模に収集・分析し、国レベルの動向や伏せられた機密情報などを読み解くアプローチだ。
この手法はすでに、私たちが耳にする情報のなかにも浸透している。キエフに向かう64キロの戦車の車列が連日報じられたが、64キロという数字は、ロシア軍が発表したものでもウクライナ軍が独自に観測したものでもない。民間の衛星企業による高解像度画像を有志や報道機関などが解析したものであり、これもOSINTの一種だ。
午前3時、不可解な渋滞
ロシアによる侵攻開始の数時間前には、誰もが閲覧できるGoogleマップ上に予兆が現れていた。午前3時という深夜帯にもかかわらず、Googleマップ上の国境付近に不気味な渋滞が表示されていたのだ。米モントレー国際大学院のジェフェリー・ルイス教授が目ざとく発見し、車列の進軍の予兆を掴んでいた。
I have spent my entire career doing #OSINT and even I think it's weird that we were able to see the first signs of the invasion using @googlemaps's traffic layer. https://t.co/XdAnVQfFdp
— Dr. Jeffrey Lewis (@ArmsControlWonk) February 24, 2022
教授はツイートを通じ、「#OSINT にはキャリアのすべてを捧げてきたが、そんな私でさえ、@googlemaps の交通状況で侵攻の最初の兆候を掴めたことは奇妙に感じられる」と述べ、公開された情報から動きが筒抜けであったことに驚きを示している。
情報戦を公平に検証
両陣営の主張が入り乱れる情報戦において、OSINTは客観的な検証ツールとしても機能する。国際戦略研究所のジョセフ・デンプシー調査官は3月16日、ロシア軍の軍用ヘリ30機を撃墜したとするウクライナ側の主張が少なくとも部分的に正確であるとの分析結果を示した。
The new @planet imagery of Kherson airport also provides first clear look at aftermath of previous 6/7 March reported overnight raid by #Ukraine forces. While claims #Russia lost 30 helicopters remain unverified, some losses are still apparent.https://t.co/XRMj279lNW pic.twitter.com/XypCpo4WqC
— Joseph Dempsey (@JosephHDempsey) March 16, 2022
ロシアが占領中の南部・ヘルソン国際空港の衛星写真を解析したところ、損傷した複数の機体を確認したという。デンプシー調査官はさらに、攻撃のさなかに撮影された分析結果と最新の衛星画像とを照合し、一貫性のある結果が得られたと説明している。
Video consistent with aftermath of apparent #Ukraine strikes on #Russia forces at Kershon airport pic.twitter.com/gn70OC1m7z
— Joseph Dempsey (@JosephHDempsey) March 16, 2022
いまでは多くの組織がOSINTの重要性に注目しており、ウクライナ情勢をめぐっても軍事専門家からジャーナリスト、そして貢献を希望する多数のアマチュアの集団まで、あらゆる人々がこうした情報の分析合戦を繰り広げている。