ウクライナ戦争を「ちゃんと理解する」ために、いま読むべき3冊の本
戦争に組み込まれるSNS
最後は『140字の戦争』をご紹介します。中東を専門に取材するジャーナリストの著者が、SNSによって戦争の手段や報道に起きている変化を明らかにしています。
冒頭、ガザ地区のパレスチナ人少女が、イスラエルのガザ侵攻の様子を実況した「市民ジャーナリスト」として紹介されています。空爆の恐怖を生々しく伝えたその発信によって、イスラエルが国際社会の激しい反感を買うことになった経緯を詳述しています。
本書に綴られているのは、中東のことだけではありません。ウクライナ政府や軍に関するネガティブな「フェイクニュース」が大量に拡散され、それがロシア政府主導のプロパガンダだったということなど、まさに今の両国の危機に連なる2010年代の動向も取り上げています。
2014年にウクライナ東部上空でマレーシア航空17便が撃墜された事件をめぐっては、ロシア側の情報工作や嘘が露呈していった経緯をつぶさに報じています。
SNSによって真偽が不明な情報が拡散され、人々を惑わせ、時に判断を誤らせる。その結果、人と人が憎しみ合い、悲惨な末路を辿る。この悲しく愚かしい連鎖はいつ断ち切れるのか──。解決の一手として、まずは誤解や偏見が生じる構造を知ることが大事かもしれません。本書は必ずやその助けとなるはずです。
『140字の戦争』
著者:デイヴィッド・パトリカラコス
翻訳:江口泰子
出版社:早川書房
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flier編集部
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