「祖父の薬で陽性反応」 ワリエワ側の主張はありえない
Kamila Valieva's Grandpa's Meds Defense 'Highly Unlikely': Doping Expert
孤独な15歳。フィギュア女子SPの演技の後、泣き出したワリエワ(2月15日) Evgenia Novozhenina-REUTERS
ドーピング違反が発覚したフィギュアスケート選手カミラ・ワリエワ選手(ロシア五輪委員会代表)の出場継続の是非をめぐるスポーツ仲裁裁判所(CAS)の聴聞会で、禁止薬物はワリエワの祖父の心臓病治療薬だったとワリエワ側の弁護士は主張した。だがドーピング問題の第一人者は、禁止成分がワリエワの体内に入った経緯についての弁護士の説明を「まずありえない」と疑問視している。
ワリエワ選手側は2月初め、ロシア反ドーピング機関(RUSDA)に対して、陽性反応が出た理由を説明した。その内容を国際オリンピック委員会(IOC)は把握しているかと記者が質問したところ、IOCのデニス・オズワルド委員は「ワリエワの主張は、彼女の祖父が服用している薬で汚染されたというものだった」と答えた。
ワリエワのドーピング検査は昨年12月に行われたが、禁止薬物の検出が明らかになったのは北京五輪開幕後のことだった。オリンピック委員会は2月14日、北京冬季オリンピックでのワリエワの競技継続は許可するが、ドーピング疑惑が解決されるまで、ワリエワが獲得する可能性のあるメダルは保留になるという決定を発表した。
信じがたい説明
ロシアの反政府系サイト「ドシエル・センター」は、聴聞会におけるワリエワ側の証言の録音を入手したと報じた。それによると、ワリエワの弁護士アンナ・コズメンコは、検出された禁止薬物で心臓病の治療薬でもあるトリメタジジンがワリエワの体内に入ったシナリオを提示してみせた。
コズメンコはこう語った。「例えば、祖父が何かを飲んだときにコップに唾液が入り、そのあとで、ワリエワがこのコップをなんらかの形で使ったのかもしれない」。
「トリメタジジンは錠剤か、カプセルに入っている」と、禁止物質管理グループ(BSCG)のオリバー・カトリン代表は本誌に語った。「だから、ワリエワの祖父が錠剤を砕いて水の中に入れたというのでもない限り、そんな説明は意味不明だ」
カトリンは、スポーツにおける薬物検査分野の第一人者であり、約20年前に国際的なアンチドーピングの第三者認証・検査機関BSCGを共同設立した。
「カプセルや錠剤なら、手に取ってそのまま服用するはずだ。水の入ったコップに入れることはない。」と、カトリンは言う。「コップの水に溶かして飲んだ場合は、他人の体内に入ることはあるが、錠剤やカプセルなら、コップに入れたりせずに服用するのが普通だから、そのようなことが起きることは考えられない」
さらに「これが粉末の薬で、コップの水に溶かして服用していたのであれば、そのような説明も可能かもしれないが、カプセルや錠剤の場合は、ちょっと筋が通らない」と続けた。