「単純で気軽」なのに数百万人がハマる、単語当てゲーム『ワードル』の魅力
Free, Fun, and Friendly
超シンプルな『ワードル』がこれほど受けているのはなぜ? JAKUB PORZYCKI-NURPHOTO/GETTY IMAGES
<5文字から成る「今日の単語」を推測するだけ。そんなネットゲーム「Wordle(ワードル)」が数百万のファンを生んだ理由とは>
アメリカ社会は今、ネットを主戦場にして分断されている。新型コロナウイルスのワクチン接種の是非から、昨年1月の連邦議会議事堂襲撃の真実まで、さまざまな問題をめぐって社会が割れている。
こんな時代に、つかの間でも一体感を取り戻せる何かが欲しい? だったら、『ワードル』はいかがだろう? アルファベット5文字の英単語を探り当てるというシンプルなゲームだが、今や英語圏を中心に人気爆発中だ。
ワードルは、パソコンやスマホで遊べる無料のゲーム。ネット上には成績を自慢し合う人々があふれている。
流行は突然始まった。開発者はニューヨークのソフトウエアデザイナー、ジョシュ・ワードル。彼は当初、このゲームを言葉遊びの好きな妻とプレーするためだけに使っていた。
ところが昨年10月に全世界に公開すると、初めは3桁台だった1日のプレーヤー数が瞬く間に数百万人に達し、1月末にはニューヨーク・タイムズに買収された。
ルールは単純。5文字から成る「今日の単語」を当てるだけ。プレーヤーには答えるチャンスが6回与えられる。
毎回の挑戦でアルファベットの位置が正解と合っていればその文字は緑に、位置が違っていれば黄色に、その文字が正解の単語に入っていなければグレーで表示される。
例えば当てずっぽうに「HINGE(ちょうつがい)」と入力してみたら、「I」が緑、「G」と「E」が黄色に表示されたとする。そこから推理して、やがて正解の「TIGER(虎)」にたどり着くというわけだ。
機内誌の数独で遊ぶくらいの気軽さ
ワードルは1日1問しか出題されず、過去の問題はプレーできない。今どきのスマホゲームにありがちなウザったい広告やうるさい通知は一切ない。旅客機の機内誌を開いて数独で遊ぶような気軽さが身上だ。
「ほかのゲームみたいに、1時間ずっと夢中になって遊ぶことはできない。でも、毎日やってしまう」と、カナダに住む編集者のジミー・トムソンは言う。「ゲームに人生を壊されずに済むくらいの、いい案配だよね」
トムソンは毎朝ツイッター上で繰り広げられるワードル大会に参加しているが、競争しているというより、どちらかというと地味で心温まる時間だと感じている。「このゲームに運の要素が大きいことは、みんな分かってるし」