最新記事

GAFA

フェイスブックはヨーロッパから「撤退する」...メタはどこまで本気か?

Is Facebook Bluffing?

2022年2月15日(火)17時40分
アーロン・マク
メタ社

人気サービスを人質にする賭けの公算は(カリフォルニア州のメタ本社) CARLOS BARRIAーREUTERS

<欧米間の個人データ移転問題を理由に、メタ社はEUでのフェイスブックなどのサービスを停止するとの脅しをちらつかせ始めたが>

メタ(旧フェイスブック)がEUに脅しをかけている。

2月2日、同社は米証券取引委員会(SEC)に提出した年次報告書で、EUからアメリカへのデータ移管ができなければ、「フェイスブックやインスタグラムを含む最も重要な製品・サービスの多くが、欧州で提供不可能になるだろう」と述べた。

だが2月7日には、最後通牒を翻すそぶりを見せた。「欧州から撤退する意向も計画も全くない」と、メタの広報担当者は米メディアで発言。「ただ、単純な事実として、メタなど多くの企業や団体はグローバル事業を展開する上で、EU・アメリカ間のデータ転送に頼っている」

メタの不満の核にあるのは、欧米間の個人データの移管に関する新たな枠組みを設けるため、EUとアメリカが続けている交渉だ。以前の枠組み「プライバシーシールド」は、欧州司法裁判所が2020年7月に無効判断を下した。米国内で保管される個人情報について、EU市民が米政府の監視から保護されていないとされることが理由だ。

同裁判所がとりわけ問題視したのが、米企業が収集した個人情報を広範囲にわたって米当局が取得できること、およびEU市民の個人情報が不適切なアクセスを受けた場合、是正を求める効果的手段が存在しないことだ。

欧州でははったり扱い

興味深いことに、メタが撤退をちらつかせるサービスの中に、傘下のメッセージアプリ「ワッツアップ」は含まれていない。欧州では、同アプリの人気が極めて高い。

米シンクタンク、プライバシーの未来フォーラムのガブリエラ・サンフィルフォルトゥナ副会長(グローバルプライバシー担当)によれば、新たな枠組みが不在のため、多数の企業が法的に曖昧な状態に置かれている。

「この状況では、企業は数多くの法的不確実性や規制上のリスクに直面する。欧州のデータ保護当局は、個々の事例ごとに判断できるからだ。だがアメリカには法律を制定する気がないように見える」

それでも、撤退論は誇張にすぎないだろう。実際、欧州では、メタの脅しははったり扱いされている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中