アボリジニーの公式旗、ようやく豪政府が権利取得 権利ビジネスが問題に
議会は2020年、やり口がとくに強引だったWMA社を問題視し、同社の役員を証人喚問している。米CNNによると議会は後日、社のやり口は「荒っぽい」と指摘したものの、法的には「完全に合法」であるとして追求を断念した。
制作者のトーマス氏は、今回の政府による権利購入で混乱に終止符が打たれるのではないか考えている。同氏はシドニー・モーニング・ヘラルド紙に寄稿し、「旗を制作したとき、団結とプライドの象徴として作りました」「決して政治の題材として作ったものではありません。将来、旗は争いの象徴としてではなく、プライドと団結のシンボルとして存在しつづけることでしょう」と綴った。
トーマス氏は今後も、作品が改変されない権利などを定めた「著作者人格権」を保有する。著作者人格権は本人が希望すれば破棄できるものの、譲渡ができないためだ。また、氏は権利の譲渡前に、デジタル世界での旗の所有の証ともいわれるNFTを鋳造し、現在所有している。
自由に利用できる本来の姿へ
オーストラリア政府が旗の著作権を購入したことで、今後は誰もがロイヤリティーを払うことなくアボリジニーの旗を使用できるようになる。これまでは民族のシンボルとして旗を愛しながらも、使用料の壁に阻まれて利用を諦めていた人々も多かった。
旗の解放運動を推進してきたリディア・ソープ上院議員はニューヨーク・タイムズ紙に対し、「(著作権の主張が冷や水となり)私たちは旗と結びついた愛とプライドをいくらか失ってしまっていました」「そして今、誰もが旗を使えるようになったことで、その愛は還ってきたのです」と語る。
なお、アボリジニーの歴史は、イギリスの侵略による苦難の歴史でもあった。このことから、旗の権利を連邦政府が保有することに違和感を抱く先住民も少なくはない。ただし、オーストラリア政府は独占的な使用を意図しておらず、自由な利用に向けた措置だとしている。
本来であればアボリジニーのコミュニティによる管理が理想ではあるが、ひどく混乱してきた歴史的経緯を踏まえれば、実務的に安定した形に落ち着いたとも捉えることができそうだ。