クーデターから1年のミャンマー 緊張の中に静寂、早朝にゲリラデモも
反軍政の独立系メディア「ミッズィマ」によると1日午前5時頃にヤンゴン市内で反軍政を訴える若者を中心とする市民によるデモが短時間行われ、民主主義の復活を訴え、無事解散したという。同じようなゲリラ的デモは中部にある第2の都市であるマンダレーでも行われたという。
軍政トップのミン・アウン・フライン国軍司令官は1日に国営放送を通じて「昨年2月1日に民主主義を掲げる我々は総選挙の不正などの困難に直面し、非常事態を宣言した」とクーデターを正当化。「テロリストが国を破壊しようとしている」と反軍政を掲げる武装市民などをテロリストと位置づけ、拘束、虐待、殺害などの強権弾圧や人権侵害を当然の行為としていることを改めて表明した。
市民弾圧を平然と行う治安当局
国営放送は1日に撮影日時が不明の軍政を支持するという市民のデモの映像も流して、軍政が国民の支持を得ていることを訴えた。
これに対し、反軍政の立場をとるメディアは「こうした映像は軍政による撮影日時や参加者も不明確な"プロパガンダ"に過ぎない」としている。
軍政は民主派による武装市民組織をテロリストとして全土で弾圧を強めており、タイ・バンコクに拠点を置くミャンマーの人権団体「政治犯支援協会(AAPP)」によると、クーデター以降1月31日までに治安当局によって殺害された市民は1503人、逮捕された市民は8835人に上っているとして軍政批判を強めている。
軍政は武装市民をテロリストと断じる一方、国境周辺で長年軍と対峙する少数民族武装勢力に対しては一方的に停戦を表明している。しかし、各地で少数民族武装勢力と軍の戦闘は続いており、停戦表明があくまで一方的なポーズに過ぎず実質的には内戦状態に近い状況が続いている。
前述の地下潜伏中のジャーナリストは、クーデターから1年となった1日、軍や警察による通行人や通行車両、開店している商店の状況を監視、警戒する様子が非常に厳しいことから「カメラはおろかスマホによる写真撮影も難しい状況だった」と述べ、治安当局が最高度の警戒体制を敷いていたことを明らかにした。
[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など