最新記事

ウクライナ危機

慌てて大使館員を退き始めたバイデン政権をウクライナ外務省が批判

Ukraine Condemns U.S. Decision to Begin Evacuating People From Country

2022年1月25日(火)18時36分
ジャック・ダットン

真っ先に逃げ出した?ウクライナの首都キエフのアメリカ大使館 Gleb Garanich-REUTERS

<ロシア軍が目前に迫るウクライナ危機の当事者からすれば、危機は今に始まったことではない。逆にロシアが流す大量の偽情報や世論操作に惑わされて騒ぎ立てればそれこそプーチンの思う壺だという>

ウクライナ外務省が、首都キエフにあるアメリカ大使館員とその家族の一部を退避させた米政府を非難した。ロシアがウクライナとの国境付近に推定10万人規模の軍部隊を集結させている件で、いよいよ戦争の危険が迫っていると判断しての行動だった。

ABCニュースは1月22日、米国務省が、一部の自国の外交官とその家族について、キエフにあるアメリカ大使館から避難を認めるべく準備を始めたと報じていた。イギリスも同様の対策を講じている。ロシアのウクライナ侵攻を想定した準備だ。

これに対しウクライナ外務省は24日に発表した声明の中で、アメリカによるこの判断を「時期尚早であり過剰な警戒感の表れ」と批判した。

「最近になって安全保障上の状況に根本的な変化が起きたわけではない。ロシアによる侵略の新たな脅威は、2014年以降、一貫して存在し続けている。国境付近へのロシア軍部隊の集結も、昨年(2021年)4月に始まったものだ」と、同外務省はつけ加えた。

ウクライナが置かれた状況

ウクライナ外務省の声明は、以下のように記している。「ロシア連邦は現在、ウクライナの国内情勢を不安定化させようとして積極的な働きかけを行っている。ウクライナおよび世界各国のメディアでは現在、大量の誤情報、世論操作、フェイク情報が拡散されている。その目的は、ウクライナ国民や外国人の間にパニックの種をまき、企業を萎縮させ、ウクライナの経済的・財政的安定を弱体化させることだ。この状況においては、リスクを冷静に分析し、落ち着きを保つことが重要だ」

同省はその後、アメリカの「先を見越した外交姿勢」と、ウクライナに軍事支援を提供したことに関して、「非常に感謝している」と述べた。

ウクライナ東部国境沿いの地帯には、推定10万人規模のロシア軍部隊が集結している。欧米諸国の政府首脳との会談は行われているものの、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の翻意を促すには至っておらず、ヨーロッパで新たな紛争が起きるのではとの懸念が高まっている。

仮に実際に紛争が起きた場合、ロシアとウクライナの両国が戦火を交えるのはこれが初めてではない。

2014年には、ウクライナ国内で反政府デモが起き、親ロシア派だった当時の大統領が失脚した後、ロシアがウクライナのクリミア半島を占拠した。それ以降ウクライナ軍は、同国東部のドンバス地方で、ロシアが支援する反政府武力勢力と悲惨な紛争を繰り広げてきた。この戦闘で、1万4000人が命を落としたと推定されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ロシアが25-27年の石油・ガス輸出収入予想を下方

ワールド

米厚生長官ら、食品の石油系合成着色料の使用禁止計画

ワールド

米国務長官、今週のウクライナ和平交渉に出席せず 訪

ビジネス

米国、英国に自動車関税10%から2.5%への引き下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 2
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 3
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 4
    パウエルFRB議長解任までやったとしてもトランプの「…
  • 5
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 6
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 7
    日本の人口減少「衝撃の実態」...データは何を語る?
  • 8
    コロナ「武漢研究所説」強調する米政府の新サイト立…
  • 9
    なぜ世界中の人が「日本アニメ」にハマるのか?...鬼…
  • 10
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 7
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中