慌てて大使館員を退き始めたバイデン政権をウクライナ外務省が批判
Ukraine Condemns U.S. Decision to Begin Evacuating People From Country
真っ先に逃げ出した?ウクライナの首都キエフのアメリカ大使館 Gleb Garanich-REUTERS
<ロシア軍が目前に迫るウクライナ危機の当事者からすれば、危機は今に始まったことではない。逆にロシアが流す大量の偽情報や世論操作に惑わされて騒ぎ立てればそれこそプーチンの思う壺だという>
ウクライナ外務省が、首都キエフにあるアメリカ大使館員とその家族の一部を退避させた米政府を非難した。ロシアがウクライナとの国境付近に推定10万人規模の軍部隊を集結させている件で、いよいよ戦争の危険が迫っていると判断しての行動だった。
ABCニュースは1月22日、米国務省が、一部の自国の外交官とその家族について、キエフにあるアメリカ大使館から避難を認めるべく準備を始めたと報じていた。イギリスも同様の対策を講じている。ロシアのウクライナ侵攻を想定した準備だ。
これに対しウクライナ外務省は24日に発表した声明の中で、アメリカによるこの判断を「時期尚早であり過剰な警戒感の表れ」と批判した。
「最近になって安全保障上の状況に根本的な変化が起きたわけではない。ロシアによる侵略の新たな脅威は、2014年以降、一貫して存在し続けている。国境付近へのロシア軍部隊の集結も、昨年(2021年)4月に始まったものだ」と、同外務省はつけ加えた。
ウクライナが置かれた状況
ウクライナ外務省の声明は、以下のように記している。「ロシア連邦は現在、ウクライナの国内情勢を不安定化させようとして積極的な働きかけを行っている。ウクライナおよび世界各国のメディアでは現在、大量の誤情報、世論操作、フェイク情報が拡散されている。その目的は、ウクライナ国民や外国人の間にパニックの種をまき、企業を萎縮させ、ウクライナの経済的・財政的安定を弱体化させることだ。この状況においては、リスクを冷静に分析し、落ち着きを保つことが重要だ」
同省はその後、アメリカの「先を見越した外交姿勢」と、ウクライナに軍事支援を提供したことに関して、「非常に感謝している」と述べた。
ウクライナ東部国境沿いの地帯には、推定10万人規模のロシア軍部隊が集結している。欧米諸国の政府首脳との会談は行われているものの、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の翻意を促すには至っておらず、ヨーロッパで新たな紛争が起きるのではとの懸念が高まっている。
仮に実際に紛争が起きた場合、ロシアとウクライナの両国が戦火を交えるのはこれが初めてではない。
2014年には、ウクライナ国内で反政府デモが起き、親ロシア派だった当時の大統領が失脚した後、ロシアがウクライナのクリミア半島を占拠した。それ以降ウクライナ軍は、同国東部のドンバス地方で、ロシアが支援する反政府武力勢力と悲惨な紛争を繰り広げてきた。この戦闘で、1万4000人が命を落としたと推定されている。