ミャンマー軍政との関係見直し求める声高まる 会計検査機関や日本政府も対象に
クーデター発生直後から日本は「民主政府と軍の双方に対話のパイプがある」として仲介・調停に乗り出し、日本の「特別な立場」を強調してきた。
だがここで言われる「軍とのパイプ」とは防大留学生ですでに帰国して軍の幹部あるいは中堅幹部として軍務についている軍人などであり、旧日本兵の遺骨収集活動などに名を連ねている民間人と軍政幹部の限定的な繋がりに過ぎない。
この民間人は日本外務省などと協力して軍政に働きかけて拘束されていた日本人ジャーナリストの解放交渉を進めた。
しかし軍政に抵抗を続ける市民にとって日本の姿勢は「もどかしい」として苛立ちが強まっているという。
国内各地で戦闘激化、犠牲者増加
2月1日のクーデター1周年を前に軍は国内治安安定を内外に示すためか、各地で攻勢を強めており、武装市民組織PDFや少数民族武装勢力との戦闘が激化、その影響で非武装・無抵抗の一般市民の犠牲も増加している。
PDFとの関係が疑われる市民らを後ろ手に縛り火を放って焼殺したり、斬首してその首を見せしめに晒すなど、軍による残虐な殺害、人権侵害も伝えられている。
1月になって北西部サガイン地方域やチン州では軍が増強されてPDFや少数民族武装勢力の「チンランド防衛隊(CDF)」との戦闘が激化しているほか、西部ラカイン州でも「アラカン軍(AA)」と軍が衝突している。
東部のカヤ州では州都ロイコウでの激しい戦闘で住民多数が避難を余儀なくされているというように、全土で戦闘が続き犠牲者が増えているのが現況だ。
タイ・バンコクに拠点を置くミャンマーの人権団体「政治犯支援協会(AAPP)」は1月19日現在、クーデター後にミャンマー軍などの治安当局によって殺害された市民が1483人に上り、逮捕・起訴あるいは判決を受けた市民が8687人に達していることを明らかにしている。
「ミャンマー・ナウ」の報道は最後に「クーデター後、ミャンマー軍との軍事的関係を中止したニュージーランドやオーストラリア政府と同じように、日本はミャンマーとの軍事的関係を中断すべきである。さもないと日本はミャンマー軍の残虐行為に間接的に加担するリスクを負うことになるだろう」として日本に対して決断を求めている。
[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など