「ひざの痛み」という悩みがいつまでも解消されない、日本ならではの事情
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<多くの人が「ひざの痛み」という悩みから抜け出せない原因は、日本ならではのライフスタイルや従来の治療法の問題にも関わりが>
肩こりに腰痛、背中の痛み......年をとるにつれて体のあちこちに多少の不具合がでてくるものだが、なかでも困るのは「ひざ痛」ではないだろうか。もちろん、腰や首、背中の痛みなどもつらいものだが、ひざ痛の場合、「歩く」という日常生活の基本動作に支障をきたす点が、実に深刻な問題となる。
東京・足立区で「アスリートゴリラ鍼灸接骨院」を開業している高林孝光は、毎日のように訪れるひざ痛の患者をなんとか救いたいという思いから、長年、試行錯誤を重ねてきた。
高林はこれまで、車椅子ソフトボール日本代表のチーフトレーナーを務めたほか、世界ランキングトップクラスのプロゴルファーやフェンシングの五輪日本代表選手ら著名アスリートのケアもしている治療家だが、通院者の多くは一般的な「痛み」の治療に通ってくる普通の人たちだという。
現在、医療の世界は日進月歩の進化をとげている。AIを応用した診療や、最先端テクノロジーによる手術法の開発などにより、患者にとって低侵襲(体の負担の少ない)医療が現実のものとなっているのだ。
にもかかわらず、昔からほとんど変わっていないのが「痛み」の治療である。今回、ひざ痛を解消するためのセルフケア法を公開した高林の新刊『ひざ痛がウソのように消える! 1日40秒×2 ひざのお皿エクササイズ』より、治療の現状や痛みの生じるメカニズム、セルフケアの方法について、3回にわたって紹介する。
なぜあなたのひざ痛は治らないのか
「歩くとひざがギシギシいって痛くてたまりません」
「立ち上がるときにひざに激痛が走ります」
「痛み止めを飲んでも、湿布を貼っても、ひざの痛みが取れません」
当院には、このように訴える患者さんが、それこそ毎日のように来院されます。主に40〜60代が中心で、男女の比率は4対6といったところでしょうか。
ひとことでひざ痛といっても、さまざまな病態や原因がありますが、圧倒的に多いのは変形性膝関節症です。変形性膝関節症は、ひざ関節の軟骨がすりへることによって痛みや腫れを起こす病気です。したがって、レントゲン検査でひざ関節の軟骨の変形が認められると、変形性膝関節症という診断名がつきます。国内では、60歳以上の約6割が変形性膝関節症を患い、ひざ痛の原因の約9割が変形性膝関節症といわれています。
ひざ関節の軟骨がすりへる最大の理由は加齢といわれています。人が歩くとき、体重の約5倍もの負荷がひざにかかります。その長年にわたる負荷が積み重なって、年とともに軟骨がすりへっていくのです。そのことを証明するように、高齢社会の到来とともに、変形性膝関節症の患者数は年々増加しています。