カザフ騒乱 なぜ暴徒化? なぜロシア軍? 今後どうなる?
Kazakhstan’s Instability Has Been Building for Years
独立系メディア「ウラルスカヤ・ネデリャ」のルクパン・アクメドヤロフ編集長は、アルマトイのデモが暴徒化した理由について同国のエリート層内の争いが原因だと指摘する。
カシムジョマルト・トカエフ現大統領の派閥とナザルバエフの甥である安全保障会議副議長が地方の公安部隊に非公式な影響力を持っているため、トカエフが軍や公安のエリート層を指揮できずにいるというのだ。
「大統領は、(ロシアが主導する軍事同盟)『集団安全保障条約機構(CSTO)』に支援を要請するしかなかった......軍が自分に従わない状況下で、自分の力では対処できないと分かっているからだ」と、アクメドヤロフは言う。
今月5日、ナザルバエフに最も近い側近のカリム・マシモフ元首相が同国の治安機関である国家安全保安委員会(KNB)の議長職を解任され、8日に国家反逆容疑で逮捕されたことは、この見立てと一致する。
略奪者たちは何らかの方法でKNBの厳重な警備をかいくぐって兵器庫を手中にし、街を襲った。しかし、実際に何があったのか、また今後の展開について確かな説明は難しい。
国内の通信手段はほとんど機能しておらず、ソーシャルメディアは虚偽情報であふれているからだ。
デモが残したトラウマ
確かなことは、カザフスタンは独立後の歴史上、最も崩れやすい状況にあるということだ。
トカエフはCSTOに支援を要請し、カザフ国内にはロシア軍をはじめとする外国軍が送り込まれた。これら外国軍がデモを鎮圧できたとしても、長期的ダメージは深刻だ。
外国軍は既に撤退を開始し、1月23日以降は国内に残らないとトカエフは述べているが、まだどうなるか分からない。
ロシア軍の駐留が続けば、カザフ語を話す人々と、カザフ北部のロシア国境地域に住むロシア語人口の間の対立を加速し得る。言語による分裂は、異民族間の衝突や分離主義運動につながりかねない。
もしナザルバエフが完全に失脚したのだとしたら、現政権はナザルバエフの遺産をどう位置付け、彼の一族とどう付き合っていくつもりなのか。デモ当初からナザルバエフと彼の一族が公の場から姿を消していることは、社会不安をひたすら増幅させている。
カザフスタンの争乱は、究極的には人道問題でもある。
同国は破壊されたインフラを立て直し、助けが必要な人々に手を差し伸べ、生活必需品の流通を担保する必要がある。
また、この国の制度や、国家的安定や繁栄といった国際的なイメージの構築に、今まで以上に取り組んでいかなければならない。
1月15日時点で225人が亡くなり数千人が拘束されている。その中で政府と国民がやるべきなのは、独立後の歴史上、最も血にまみれたデモのトラウマに打ち勝つ道を探すことだ。
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