刑務所での感染拡大を防ぐため、「起訴見送り」や「釈放」も実施すべきだ
Keeping Jails Safe from Omicron
ペンシルベニア州の刑務所では昨冬、クラスターが発生した MARANIE R. STAABーREUTERS
<常に過密状態にある刑務所・拘置所は新型コロナのクラスターの温床だ。新たな流行を防ぐには3本立ての施策が鍵を握る>
アメリカでは新型コロナウイルスのパンデミックで最も感染が拡大したホットスポットのいくつかは刑務所・拘置所だった(編集部注:アメリカの拘置所は地方当局の管轄下にあり、未決囚と短期刑の受刑者を収容している)。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校法科大学院チームの集計と分析で、パンデミック発生からこの方、アメリカの受刑者は一般の人よりも新型コロナの感染率が3倍以上、死亡率は2倍以上高かったことが分かっている。
特に昨冬は刑事施設での大規模クラスターが相次いだ。2020年12月半ば~21年2月だけでも10万人超の受刑者が感染、少なくとも727人の死亡が報告された。同時期に刑事施設の職員も3万1000人超が感染、少なくとも73人が亡くなった。
オミクロン株が広がり、新たな感染拡大が懸念されるなか、前回の二の舞いを避けるには迅速な対応が急務だ。
アメリカの刑務所・拘置所の過密状態は以前から問題視されていた。パンデミックのさなかにもマスクや消毒剤が不足し、検査もまともに行われなかった。公衆衛生の専門家は収容人数を減らすよう訴えたが、各州当局と施設側の反応は鈍く、施設内の「密」は緩和されなかった。
その結果、「塀の中」だけでなく外にも感染が広がった。ある調査報告によれば、20年夏には、刑事施設の過密状態が生み出した新たな感染者が50万人を超えたという。別の調査では、イリノイ州の感染者の約16%は感染経路をたどると最終的にクック郡拘置所に行き着くことが分かった。
収容人数を減らして密の解消を
これまでの経験から、いま打つべき手は明らかだ。刑事司法機関のあらゆるレベルでエビデンスに基づく感染対策を実施する必要がある。
まずは収容人数を減らすこと。パンデミックが始まったときから公衆衛生の専門家は密の解消が最優先だと主張していた。高齢の受刑者が多い刑務所はもちろんのこと、被収容者の入れ替わりが激しく周辺地域に感染を広げかねない拘置所も例外ではない。
受刑者のソーシャルディスタンス確保を助けるためには、検察官は保釈金が払えない被疑者が拘置所に入らずに済むよう比較的軽い罪については起訴を見送るべきだ。また裁判所は刑事施設がコロナ対策のために受刑者を釈放することを認めてほしい。州知事、州議会、刑務官、保安官もそれぞれの執行・立法権限で密解消に努めるべきだ。