中国「サラミ戦術+ドローン」が台湾を挑発する
TAIWAN ON THE BRINK?
中国がUAVを使用した場合、台湾は厳しい選択を迫られる。外交チャンネルによるコミュニケーションが行われなかったら、対抗策は限定されたものになる。
その中で最も緊張激化を招くのは、侵入してきたUAVを撃墜することだ。
台湾政府は、中国のUAVが南シナ海上空の領空を侵犯すれば撃墜すると示唆しており、そのための演習も行っている。今後この方針が、中国UAVによるADIZ侵入に拡大されれば、緊張激化は免れない。
そこまで手荒ではない代替策もあるが、やはり大きな問題につながりかねない。中国UAVとの意図的な空中衝突という手段には、相手側の機体を破壊して事態を悪化させるリスクがある。中国の脅威に対抗する上で危険な前例を作る恐れもある。
妨害電波でUAVを無力化する策は、いくらか穏やかに思える。だが台湾にその技術力があるかどうかは不明だし、あったにせよ中国の航空機と直接対峙するという危険は残る。
以上3つの方法で問題なのは、いずれの場合にも事態を悪化させるような破壊行為や物理的介入を行うのが、中国ではなく台湾だという点だ。
これでは、中国が台湾を「侵略者」に仕立て上げることになりかねない。
台湾が取り得る最終手段は、国家安全保障の責務を放棄して中国の侵入を許すというものだ。だがこれには、より大きい政治的な闘いに敗れるリスクと、台湾に自衛の意思が欠けていると見なされるリスクが伴う。
これらのシナリオは、中国が台湾のADIZ侵入にUAVやUCAVを使用した場合に、台湾の政府と空軍が直面する外交、軍事、政治上の問題を示している。
だが中国が戦略上および地政学上の理由から、作戦に無人機を導入しようとする可能性は十分にある。台湾は早期に具体的な対応策を確立し、公表すべきだ。
これまで専門家は、中台間の直接衝突が起きる可能性は低いと考えてきた。
しかし国際政治学者のジョセフ・ナイが最近の論考で指摘したように、東アジアで差し迫った軍事衝突の恐れはないものの、「偶発的に軍事衝突が起きる」リスクはある。台湾海峡上空でのUAVの使用はそのリスクを大幅に引き上げ、緊張激化のスパイラルを招く可能性がある。
第1次大戦を引き起こしたのはドイツだけの責任ではなく、欧州各国の政治家たちがまるで夢遊病患者のように無自覚に戦争を誘発したという主張がある。
ナイは別の論考でこれを引き合いに出し、「対中夢遊病症候群」が衝突につながる恐れがあると強調した。
皮肉な話だが、夢遊病患者と特に自律型のUAVはよく似ている。どちらもコミュニケーションが取れず、強力な介入が必要になる。
そのような介入は、台湾と周辺地域の安全保障にとって悲惨な結果を招きかねない。
From thediplomat.com
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