最新記事

BOOKS

道路を渡り切れない老人は日本に300万人以上、その理由

2022年1月28日(金)19時55分
印南敦史(作家、書評家)

介護で不幸にならないための3つのポイント

確かに、介護には大変そうなイメージがある。またメディアも、負の側面ばかりを強調しすぎるきらいがある。だが介助による支援は、風呂の介助、排泄の処理、食事の世話など目につきやすいものだけでなく、もっと前の段階、すなわち「日常生活に支障をきたし始めたあたりから」受けられるものだ。

にもかかわらず、マイナスの暗いイメージばかりが強調されるため、「できれば考えたくないこと」「見て見ぬ振りをしたくなるようなこと」というような歪んだイメージばかりが肥大化してしまうのかもしれない。

介護に極度な苦手意識を抱き、距離を置きたくなってしまうのも無理はないだろう。しかもそれは介護される側、すなわち親についても言える。

その証拠に、親に介護の話をした結果、「俺はまだ介護を必要とするほど衰えていない」「そんな縁起の悪い話をするな」などと反発されたというのはよく聞く話だ。そうなると子の側も、「まだ介護のことは考えなくていい」と放っておきたくなるかもしれない。

だが、そんなことを繰り返しているうち、身体機能がさらに衰えていくことも考えられる。その結果、介護による支援が遅れてしまい、家族も本人も苦労してしまう可能性だってある。

著者もその点が気になっているようだ。せっかく介護保険制度ができ、(十分ではないにせよ)国や地方自治体で支援する体制ができているにもかかわらず、支援を受けないのはもったいないと。だからこそ、介護のマイナスイメージを払拭して前向きに考え、必要な情報を入手し、介護による支援をどんどん活用してほしいのだと。

もちろん、初めての人が介護支援を受けるとなると、不安が付いて回るだろう。そこで著者は「介護で不幸にならないための3つのポイント」を挙げる。


・支援をとことん利用する。
・情報を集め、他人に任せず、本人もしくは、家族が考えて選択して行動する。
・身体機能を維持させることを第一に考える。(58ページより)

介護する家族の人生も、同様に大切な人生

まず重要なのは、「支援をとことん利用する」という意識を持つこと。


 介護保険という保険制度を利用することで、多くの人が介護支援を受けられる制度があります。
 これは、40歳になると、自動的に保険料を支払うようになるのです。
 ですから、利用するのは、当然の権利といっていいでしょう。(59ページより)

また、粗大ゴミを自宅の前で回収してくれたり、交通機関の利用料金が安くなったりと、さまざまな自治体のサービスもある。ただしそれらは申請しないと利用できないので、忘れずに申請することが不可欠。情報収集は大切なのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏

ワールド

米、クリミアのロシア領認定の用意 ウクライナ和平で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進

ビジネス

トランプ氏が解任「検討中」とNEC委員長、強まるF
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 6
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 7
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 10
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 6
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中