北京五輪フィギュア女子、名演技に見る日本代表3選手の個性
2つ目は、2018年世界選手権のFS「スカイフォール」です。2018-19年シーズンの女子代表枠は、2月の平昌五輪も3月の世界選手権も2枠ずつありました。僅差で五輪代表を逃した樋口選手は世界選手権の日本代表に選ばれます。SPでは連続ジャンプでの転倒があって8位と出遅れましたが、FSはキレのある踊りを見せるパートと情感たっぷりのスローパートを演じ分け、ノーミス演技で2位。総合点で銀メダルを獲得します。
3つ目は、2020年四大陸選手権FSの「ポエタ」です。公式戦で初めて3回転半ジャンプに挑み、転倒はしましたがしっかりと回りきりました。樋口選手の3回転半ジャンプは、その後、2020年のNHK杯FSで1/4回転足りないものの着氷し、2021年のジャパンカップ(非公式戦)で初めてGOE(出来栄え点)で加点がつきました。この試合は、樋口選手が北京五輪に向けて最も努力した「3回転半ジャンプのプログラムへの導入」の第一歩となりました。
河辺愛菜(17)──成功率の高い3回転半に注目、演技構成点に伸びしろ
SP「四季より『冬』」、FS「Miracle」
2019年全日本ジュニア優勝。2020-21年シーズンからシニアに上がったホープです。小学生の時から国際大会で優勝しており、地元のテレビ局で密着番組が作られました。中学2年で、宮原知子選手や紀平梨花選手を指導する濱田美栄コーチに師事するために、愛知から関西に転居。今季はSP、FSともに3回転半ジャンプを組み入れています。他の二人の五輪代表選手と比べると、技術要素以外のつなぎが薄く演技構成点はまだ低いですが、もともとは踊れる選手。高難度ジャンプに慣れて余裕ができれば、つなぎにさらに工夫を凝らして演技構成点もぐっと伸びるはずです。
今季は2曲ともローリー・ニコルさんが振り付けました。ソチ五輪の浅田真央選手のSPや今季の鍵山優真選手への振付で名高い振付師です。
SPは、前半は吹きすさぶ風の音で踊るという珍しいスタイル。成功率の高い3回転半と連続ジャンプが見せ場です。後半は曲調がメロディアスになり、ステップやスピンの表現が見どころとなります。
いっぽうFSは、ロックバンドX JAPANのリーダーでもあるYOSHIKIが作詞作曲し、イギリスのサラ・ブライトマンが歌唱する曲を選びました。荘厳な美しい調べに乗って、冒頭の3回転半ジャンプや連続ジャンプなどの要素を的確にこなしていきます。河辺選手は、連続にする予定のジャンプが単独で終わっても、後半にリカバリーする力があるので大崩れすることが少ないのも注目ポイントです。