北京五輪フィギュア女子、名演技に見る日本代表3選手の個性
ロシアの牙城を切り崩すのは?(左から坂本花織選手、樋口新葉選手、河辺愛菜選手) From Left:Pontus Lundahl/TT News Agency via REUTERS, Denis Balibouse-REUTERS, Issei Kato-REUTERS
<北京五輪への出場を決めた坂本花織選手、樋口新葉選手、河辺愛菜選手──過去の演技から3選手の魅力を知ることで、フィギュア観戦は倍楽しめる>
昨年末に行われた全日本フィギュアスケート選手権大会で、北京五輪の出場選手が決定しました。日本代表は、男子は羽生結弦選手、宇野昌磨選手、鍵山優真選手、女子は坂本花織選手、樋口新葉選手、河辺愛菜選手、ペアは木原龍一・三浦璃来組、アイスダンスは小松原美里・尊組です。
北京五輪フィギュアスケート競技のシングル女子代表選手について、今シーズンのSPとFS(※1)の演技の見どころと、過去の代表的な名演技をご紹介します。
※1 フィギュアのシングル競技は、SP(ショートプログラム)とFS(フリースケーティング)の2演技の合計点で競う。
▼男子選手の紹介記事はこちら
これさえ知ればフィギュア通! 北京五輪男子代表3選手の神演技をおさらいする
坂本花織選手(21)──伸びやかで雄大な演技にロシアのマスコミも警戒
SP「Now We Are Free」、FS「No More Fight Left In Me」
2018年平昌五輪の出場者。当時、女子の出場枠は2枠しかなく、坂本選手はシニア1年目でしたが、2017年全日本選手権で宮原知子選手に次ぐ2位となり五輪出場を決めました。
坂本選手の魅力は、伸びやかで雄大な演技です。凄まじいスピードでリンクの端から端までを駆け抜け、ジャンプも大きな幅で飛んで余裕があります。テレビ画面よりもスケート会場で演技を見ると、より魅力がわかる選手です。
北京五輪のフィギュア女子の表彰台はロシアが独占するという見方が有力ですが、ロシアのマスコミが「ロシアの牙城を切り崩す可能性がある」と最も警戒しているのが坂本選手です。
坂本選手は平昌五輪シーズンから、フランス人振付師のブノワ・リショーさんと組んでいます。
今シーズンのSPは、坂本選手の演技史上で1、2を争うハマリプロです。映画「グラディエーター」の最後に流れる曲で、帝政ローマ時代を描いた壮大な世界観と、暴君を倒し自身も命を落とすことになった主人公の満たされた気持ちを、躍動感のあふれる力強い演技で伝えます。見どころは演技終盤のステップで、自由に向かう喜びを身体いっぱいに使って表現します。
いっぽうFSは、海外のドキュメンタリー映画「WOMAN」の音楽です。映画は「女性の芯の強さ」をテーマにしており、難解でメッセージ性の強い曲の解釈を振付に反映するリショーさんらしい選曲です。見どころは、この4年間、試行錯誤しながら自分のスケートを掴んだ坂本選手自身の芯の強さです。3回転半や4回転ジャンプはなくても、要素やスケーティングの質を極限まで高めた演技に注目してください。
坂本選手の代表的な演技を3つ、ご紹介します。
1つ目は、2016年ジュニアグランプリ(JGP)日本大会のSP「アーティスト」です。5年前の演技ですが、すでに現在の坂本選手を彷彿とさせるスピードのあるスケーティングと大きなジャンプを見ることができます。溌剌とした元気いっぱいの演技でSP1位になるとFSも2位とまとめ、JGP初優勝を飾りました。