北京五輪フィギュア女子、名演技に見る日本代表3選手の個性
2つ目は、2017年全日本選手権SPの「月光」です。3本のジャンプを基礎点が1.1倍となる後半に固めて、曲の盛り上がりとともに次々に成功させ、自己ベストとなる73.59点をあげ首位となり、瞬く間に五輪候補に名乗りをあげました。
3つ目は、2018年四大陸選手権のFS「アメリ」です。ジュニアからシニアへの移行で「大人の演技」を目指した坂本選手は、FSでパントマイムなどの独特の動きが詰まった難しいプログラムを選択します。平昌五輪の1カ月前の本大会では、全日本からさらに進化した姿を見せてSP、FSともノーミスで優勝し、オリンピックに繋げました。
樋口新葉選手(21)──情熱的な表現に注目、「パワーガール」の倍返しに期待
SP「Your Song」、FS「ライオンキング」
2018年世界選手権の銀メダリスト。前回の五輪選考では、全日本選手権で4位となり、あと一歩のところで選ばれませんでした。「これから倍返しの始まりだ」など、時には強い言葉をSNSで発信して、自分を奮い立たせて4年間練習を積んできました。今回の五輪選考では、3回転半ジャンプを演技に組み込んできました。海外の解説者に「パワーガール」とあだ名を付けられるほどのパワフルなスケーティングと、情熱的な表現に定評があります。
今シーズンのプログラムは、羽生結弦選手の「SEIMEI」などで知られるシェイ=リーン・ボーンさんが振り付けました。
SPは、もともとは別の曲を用意していましたが、8月に変更しました。静かなボーカル曲なのでともすれば退屈な演技になりがちなのですが、樋口選手はメリハリを付けて流れよく踊り、見る者の気を逸らせません。細かい音まで拾ったニュアンスや表情も見どころです。
いっぽうFSは、「今までやってきた振付や踊りが詰まっているようなプログラムで、最大限に自分の良さを活かせるプログラムだ」と樋口選手は語ります。大きく身体をつかった印象的な振付が、表現力をさらに際立たせます。加えて、2020年の四大陸選手権から実戦に組み入れてきた冒頭の3回転半ジャンプも、今季は成功率が増していて、注目ポイントです。
樋口選手の代表的な演技の1つ目は、2014年JGPドイツ大会のFS「ピアノ協奏曲(ガーシュウィン)」です。この時はノービスからジュニアに上がったばかりの13歳ですが、すでに緩急を付けた演技で、スピードに乗ったスケーティングを見せています。この大会ではSP、FSとも1位になって、JGPシリーズでの初優勝を成し遂げました。