北京五輪フィギュア女子、名演技に見る日本代表3選手の個性
河辺選手で見てほしい演技を3つご紹介します。
1つ目は、2017年プランタン杯アドバンスノービス部門でのSP「海賊」です。まだ12歳の時の演技ですが、バレエ音楽を品の良い所作と豊かな表現力で踊っています。このSPで首位に立った河辺選手は「白鳥の湖」を演じたFSでもトップで優勝します。
2つ目は、2019年全日本ジュニア選手権のFS「ブラック・スワン」です。
2016年以来の3年ぶりの出場となった全日本ジュニアのFSで、河辺選手は3回転半ジャンプを決めます。6種類の3回転ジャンプ、2回転半+3回転トゥループの連続ジャンプ、スピンとステップはすべて最高レベルという高い技術に裏付けされた演技で、SPに続きFSでも1位。2位の選手に約15点の差をつけて優勝します。
3つ目は、2021年NHK杯のSP「四季より『冬』」です。この大会は、同門の紀平梨花選手の欠場で、大会数日前に急遽、出場が決まりました。河辺選手はチャンスを逃さず、SPから果敢に3回転半ジャンプに挑んでGOEで大きな加点をもらって成功し、SP2位になります。翌日のFSでは3回転半は失敗しますが他の要素をまとめて4位に踏みとどまり、総合点で2位。シニアの国際大会で初めて表彰台に上がりました。
北京五輪のフィギュア競技は、女子は男子と比べると個人競技でのメダル獲得は難しい状況です。とはいえ、各選手の演技は「唯一無二」なので、長所に注目しながらじっくりと鑑賞する価値があります。今回の記事を参考にして、「冬季五輪の華」のフィギュア女子を何倍も楽しみませんか。
[筆者]
茜 灯里(作家・科学ジャーナリスト)
東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専攻卒業。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)、獣医師。朝日新聞記者、国際馬術連盟登録獣医師などを経て、現在、大学教員。フィギュアスケートは毎年10試合ほど現地観戦し、採点法などについて学会発表多数。第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。デビュー作『馬疫』(光文社)を2021年2月に上梓。