議会選挙を拘置所で迎えた香港民主派 活動封じられても不屈の意思
自由で開かれた社会と生活が中国政府にじわじわと浸食される中、香港の民主派にとって今年の立法会(議会)選挙は自らの運動が1つの節目を迎える瞬間になるはずだった。写真は香港の女性用拘置施設の脇を通過するバン。12日撮影(2021年 ロイター/Tyrone Siu)
自由で開かれた社会と生活が中国政府にじわじわと浸食される中、香港の民主派にとって今年の立法会(議会)選挙は自らの運動が1つの節目を迎える瞬間になるはずだった。選挙で過半数議席を獲得し、香港の未来に対する強い発言権を持てると期待していたからだ。
しかし彼らの多くは選挙前に集会を開くことはできず、拘束されて裁判の開始を待ちながら、拘置所内で睡眠、運動、食事、勉強を規則的にこなしている。ペンの支給は月2本、書籍は同6冊だ。別の活動家は海外に逃げ出した。
訴追を免れるために米国に渡った民主派の1人、サニー・チャン氏(25)は「全ての出来事が矢のように過ぎ去った。1年たってみると、残された本物の民主派はほとんど存在しない。民主派は収監されているか、亡命してしまった」と語る。
「だからこそ、特に多くの指導者が自らの自由を犠牲にして塀の中に閉じ込められた今こそ、われわれは(活動の)原則を堅持し、歴史を忘れてはならない」と訴える。
ロイターは19日の立法会選挙を前に、収監中あるいは亡命中、保釈中の民主派6人に話を聞くことができた。
立法会選挙は本来、2020年9月に実施される予定だったが、中国政府が新型コロナウイルスの感染拡大を理由に延期。今年2月に入ると、香港警察が香港国家安全維持法(国安法)に定められた「国家転覆罪」で民主派47人を起訴。彼らが行った非公式の予備選挙をその理由に挙げた。
3月には中国全国人民代表大会(全人代)が香港の選挙制度変更案を可決し、立法会の直接選挙枠が全体の半分から4分の1に減った半面、親中派が占める選挙委員会が3分の1以上を選出する形になった。さらに中国政府の肝いりで、立法会の候補者が「愛国者」かどうかを事前に審査する機関も設置された。
それ以降、検察当局は裁判所から準備のための時間延長を繰り返し認められ、拘束された民主派のほとんどは香港各地の6カ所の拘置所で審理が始まるのを待っている。11月下旬には香港治安裁判所の判事が、約1万ページに及ぶ証拠書類の翻訳時間を確保する目的で、来年3月まで裁判を中断することを決めた。
被告を守るため匿名でロイターの取材に応じた民主派の弁護士によると、訴追内容を詳しく記した起訴状がまだ提示されないため、助言を与えられず困っているもようだ。通常の刑事起訴手続きから外れているが、なぜ提示が遅れているか公式に理由は明かされていない。