最新記事

香港

議会選挙を拘置所で迎えた香港民主派 活動封じられても不屈の意思

2021年12月19日(日)12時02分
香港の女性用拘置施設の脇を通過するバン

自由で開かれた社会と生活が中国政府にじわじわと浸食される中、香港の民主派にとって今年の立法会(議会)選挙は自らの運動が1つの節目を迎える瞬間になるはずだった。写真は香港の女性用拘置施設の脇を通過するバン。12日撮影(2021年 ロイター/Tyrone Siu)

自由で開かれた社会と生活が中国政府にじわじわと浸食される中、香港の民主派にとって今年の立法会(議会)選挙は自らの運動が1つの節目を迎える瞬間になるはずだった。選挙で過半数議席を獲得し、香港の未来に対する強い発言権を持てると期待していたからだ。

しかし彼らの多くは選挙前に集会を開くことはできず、拘束されて裁判の開始を待ちながら、拘置所内で睡眠、運動、食事、勉強を規則的にこなしている。ペンの支給は月2本、書籍は同6冊だ。別の活動家は海外に逃げ出した。

訴追を免れるために米国に渡った民主派の1人、サニー・チャン氏(25)は「全ての出来事が矢のように過ぎ去った。1年たってみると、残された本物の民主派はほとんど存在しない。民主派は収監されているか、亡命してしまった」と語る。

「だからこそ、特に多くの指導者が自らの自由を犠牲にして塀の中に閉じ込められた今こそ、われわれは(活動の)原則を堅持し、歴史を忘れてはならない」と訴える。

ロイターは19日の立法会選挙を前に、収監中あるいは亡命中、保釈中の民主派6人に話を聞くことができた。

立法会選挙は本来、2020年9月に実施される予定だったが、中国政府が新型コロナウイルスの感染拡大を理由に延期。今年2月に入ると、香港警察が香港国家安全維持法(国安法)に定められた「国家転覆罪」で民主派47人を起訴。彼らが行った非公式の予備選挙をその理由に挙げた。

3月には中国全国人民代表大会(全人代)が香港の選挙制度変更案を可決し、立法会の直接選挙枠が全体の半分から4分の1に減った半面、親中派が占める選挙委員会が3分の1以上を選出する形になった。さらに中国政府の肝いりで、立法会の候補者が「愛国者」かどうかを事前に審査する機関も設置された。

それ以降、検察当局は裁判所から準備のための時間延長を繰り返し認められ、拘束された民主派のほとんどは香港各地の6カ所の拘置所で審理が始まるのを待っている。11月下旬には香港治安裁判所の判事が、約1万ページに及ぶ証拠書類の翻訳時間を確保する目的で、来年3月まで裁判を中断することを決めた。

被告を守るため匿名でロイターの取材に応じた民主派の弁護士によると、訴追内容を詳しく記した起訴状がまだ提示されないため、助言を与えられず困っているもようだ。通常の刑事起訴手続きから外れているが、なぜ提示が遅れているか公式に理由は明かされていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

米加首脳が電話会談、トランプ氏「生産的」 カーニー

ワールド

鉱物協定巡る米の要求に変化、判断は時期尚早=ゼレン

ワールド

国際援助金減少で食糧難5800万人 国連世界食糧計
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 6
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 7
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 8
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 9
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中