最新記事

日本経済

不正転売について考えてみた

2021年12月16日(木)17時36分
廣瀨涼(ニッセイ基礎研究所)

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンにおいては「鬼滅の刃」の禰豆子のポップコーンバケツが発売された当時、5時間を超える待機列ができるほどであったが、その列に並んでる大半が転売ヤーであったため、不正転売目的に買い占められ、純粋にポップコーンバケツが欲しかった来園者まで購入できないことが問題となっていた。その後、購入個数制限や整理券配布などの対策は取られたが、依然高額不正転売は続いており、転売そのものに対する直接的な処置としての大きな成果は見られなかった。

今回締結された「マーケットプレイスの共創に関する覚書」ではユー・エス・ジェイ側は「メルカリに対する、特定の新商品発売情報や商品情報、商品画像などの提供」、「Webサイト等での注意喚起の実施」、「店舗で混乱が起きると予想される場合、販売制限を行うなど、必要な措置の実施」といった対応を行い、それに基づきメルカリ側は「ユー・エス・ジェイからの情報提供に基づいた、「メルカリ」アプリ上や公式ブログでの特定の新商品や一部のチケット類に関する注意喚起」、「ユー・エス・ジェイと協議の上、合意した特定の商品について、『メルカリ』の利用規約に違反する出品への削除対応の実施」、「ユー・エス・ジェイと協議の上、合意した特定の商品に関する出品について、注意喚起を行うアラート機能の発動」といった形で対応していくようであり、手始めに「禰豆子ポップコーンバケツ」がその対象となっている2。

ユー・エス・ジェイにとってはメルカリに不正転売目的で出品されることを防ぐことができ、メルカリ側にとっても不正転売の横行を防ぐことでマーケット秩序の維持に繋げることができるのである。尚、2021年12月2日より、「禰豆子ポップコーンバケツ」は購入時に本人の入場券が必要となり、また購入個数は販売期間中一人につき1個までというルールが加わり、今後不正転売の状況は少しずつ改善していくと思われる。

この他にもメルカリは2021年3月17日、「ユニクロ」や「GU」を展開する株式会社ファーストリテイリングと同様の協定を締結3,4している。例えば昨今ユニクロでは、ファッションデザイナーのジル・サンダー氏とコラボした「+J」シリーズやファッションブランド「Theory」とのコラボ商品「UNIQLO x Theory」などレギュラー商品ではない限定品を展開し、消費者から高い注目を得ており、2020年11月に発売した「+J 2020年秋コレクション」の発売時は、通常1万9900円のコートがメルカリでは約6万円で出品されるなど、高額不正転売の対象となっていた5。中でも名古屋のJRゲートタワー店では一般消費者と転売ヤーが殺到してマネキンや窓が壊されるなど、混乱が生じたことを覚えている読者もいるのではないだろうか。

メルカリサービス開始7周年記念に公開された調査6によれば「ユニクロ」が3年連続で出品・購入ともに最も多く取引をされているブランドに選ばれており、ファーストリテイリンググループブランドの様々な商品が流通していることがわかっている。もちろんサスティナブル消費や資源活用のためというリユーズの意識の下取引されているのであれば、大いに商品の循環は行われるべきであるが、残念ながらそのような取引だけでなく、人気の最新ユニクロ商品が高額不正転売の対象となっているのである。本協定においてもユー・エス・ジェイと同様に特定の新商品発売情報や商品情報、商品画像などが提供がされ、それに基づいて合意した特定の商品を「メルカリ」の利用規約に違反する出品として削除対応が行われている。それでも出品者側は隠語を用いて商品を出品したり、深夜帯のメルカリ側のチェックが入りにくい時間帯だけ出品をするなど、運営側とのいたちごっことなっている。

────────────────
3 メルカリとファーストリテイリング、安心・安全な取引環境の構築に向けた包括連携協定を締結2021/03/18 https://about.mercari.com/press/news/articles/20210318_fastretailing_mou/

4 2021年12月3日メルカリは、セブン-イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンのコンビニ大手3社とも、転売対策に向けた包括連携協定を締結したと発表した。コンビニからメルカリには、限定品や「一番くじ」などの景品、非売品(販促物)などの価格や写真などを事前に提供。メルカリは共有された情報を基に出品物を監視して、高額転売品や不正入手した商品などについて、コンビニ各社と協議しながら出品を防止する。https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2112/03/news140.html 2021/12/03

5 メルカリ、ユニクロ新商品「+J」の高額転売に注意喚起 倍額での出品も 2021/03/19 https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2103/19/news155.html  ITmedia NEWS

6 フリマアプリ「メルカリ」、 サービス開始7周年記念インフォグラフィックス公開 2020/07/02 https://about.mercari.com/press/news/articles/20200702_infographics/

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ戦争「世界的な紛争」に、ロシア反撃の用意

ワールド

トランプ氏メディア企業、暗号資産決済サービス開発を

ワールド

レバノン東部で47人死亡、停戦交渉中もイスラエル軍

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中