最新記事

台湾有事

日本の安倍元首相、台湾有事で中国に軍事行動を警告

China Threat Over Taiwan a 'Dire Challenge' to All, Warns Japan's Shinzo Abe

2021年12月15日(水)16時46分
ジョン・フェン
安倍晋三元首相

12月14日、台湾主催の公開フォーラムで英語で演説した安倍元首相 MAKOTO LIN/OFFICE OF THE PRESIDENT, TAIWAN/YouTube

<2週間前に「台湾有事は日本の有事」と発言して中国を怒らせた安倍が再び勇ましい発言を繰り返したことで、安倍が与党自民党内最大の派閥の長として、日本の政治に対する影響力を維持していることが明らかになった>

日本の安倍晋三元首相は中国の反発と警告に耳も貸さずす、またもや親台湾発言を繰り返した。台湾海峡で紛争が起きた場合に日本とアメリカが協力して軍事行動を起こす、というのだ。

2020年9月に健康上の理由で首相を辞任した安倍は、12月1日に台湾の民間シンクタンク主催の公開フォーラムに参加し、「台湾有事」は日本の有事であり、日米同盟にとっても有事だと発言。ちょっとした外交問題を引き起こした。アメリカでさえ、中国の侵略から台湾を守るかどうかについては、意図的に曖昧な態度を示してきたのだ。

共同通信によると、安倍は再び13日にBS日テレの「深層ニュース」に出演し、台湾有事で介入する米海軍の船舶を中国が攻撃すれば、「集団的自衛権の行使もできる『存立危機事態』になる可能性がある」と語った。

「台湾有事は日本の有事」と語った安倍の講演と中国の怒りの反応


日本の元首相の言葉の選択は重要だ。安倍内閣は2014年の閣議決定で戦後の憲法を解釈変更し、集団自衛権を容認したが、自衛隊による武力行使が正当化されるのは日本の存立が脅かされる事態に限定されることになっているからだ。安倍は、集団自衛権の行使には、米軍の後方支援が含まれる可能性があると述べた。

中国への警告

安倍は14日に台北で行われたプロスペクト財団シンクタンク主催の台湾、アメリカ、日本のフォーラムで、英語でビデオ講演を行った。台湾の蔡英文総統が開会の辞を述べた後、安倍は再び台湾の安全保障について言及した。

「台湾とその民主主義が脅威にさらされることは、私たち全員、特に日本にとって深刻なチャレンジだ」と安倍は語り、台湾海峡における戦争の可能性を、日本の防衛計画および自衛隊と米軍の緊密な関係に結びつけた。また、日本、台湾、アメリカの防衛力の継続的な強化を促した。

「弱さは挑発を招くことを、忘れてはならない。日本、台湾、アメリカは海底から海面、空域からサイバー空間、宇宙空間まで、すべての領域で私たちの能力を増強する努力を止めてはならない」と、安倍は語った。「そのために、知識や技術を効果的に共有する新しい方法を考えよう」

「中国のように巨大な経済が、軍事的な冒険を追い求めれば、控えめに言っても自殺行為になる。これがもう一つのポイントだ」と安倍は付け加え、12月1日の発言と同じ内容を繰り返した。「中国に対しては、領土拡張を追い求めたり、隣国を挑発したり、追い詰めたりする行いはやめろと言うべきだ。そのような行動は中国自身の利益を損なうことになるからだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米民主上院議員、トランプ氏に中国との通商関係など見

ワールド

対ウクライナ支援倍増へ、ロシア追加制裁も 欧州同盟

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏

ビジネス

金、3100ドルの大台突破 四半期上昇幅は86年以
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    「関税ショック」で米経済にスタグフレーションの兆…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中