公用車も買えず、出国はトロッコで...北朝鮮で暮らす各国外交官のリアルな日常
The Life of Diplomats in North Korea
シリア政府は、平壌の大使館がコンピューターやコピー機など基本的な事務機器の購入に苦労していると訴えた。「現地では自動車やその部品を購入することも、外国で購入した車の部品やメンテナンス用品を見つけるのも難しい」と、駐北朝鮮シリア大使館は国連宛ての書簡に記している。「地元民以外の外国人が好むような食品は、現地の市場にはない」
さらにシリア大使館は「制裁によって、外交官の活動が困難になっている」と訴えた。「ここには国際航空会社のオフィスはなく、運航便もない。旅行会社もない。......贅沢品、特に消費財、必要不可欠な家財道具、電気・電子機器などは見当たらない。入手できたとしても、非常に高価だ」
情報も展望もない毎日
これらの証言が浮き彫りにするのは、日常のあらゆる面を縛る政府の統制と、制裁による広範な経済活動の制限という二重苦に陥った国で外交活動を行う難しさだ。
ただし、それが全ての国に当てはまるわけではない。イギリスやドイツ、イタリアなど平壌に駐在する欧州の外交官は、制裁が外交に及ぼす影響はそれほど重くみず、北朝鮮当局による官僚的な制約の行きすぎを強調していた。
当時の駐北朝鮮ドイツ大使ゲルハルト・ティーデマンは、11年12月9日に国連の制裁専門家の集まりを主催。高級品の購入を禁止する法律があっても、エリート層が18年物のウイスキーを購入するのを妨げない国で、欧州の外交官がどう暮らしているかを語った。
北朝鮮当局者は外国人との交流が禁止されており、欧州の外交官と接触する機会はほとんどない。ティーデマンが会った北朝鮮の当局者も、外務省の欧州担当部長くらいだ。
ドイツの外交官が人道支援プロジェクトの視察のため地方に行こうとすると、許可証と政府当局者の同行が必要だと言われた。寧辺の核施設を視察したいという要請は常に退けられた。さまざまな手続きなしには「中国国境まで近づくことも許されなかった」と、この内部文書にはある。
平壌にいると、北朝鮮に核技術を提供した疑いがあるイランを含む他の制裁対象国との密な関係を目にする機会がある。ティーデマンによれば、イラン大使は平壌で実に積極的に動いており、空港では相当数のイラン人を目撃できた。
ティーデマンがイラン大使と会ったとき、大使は聞かれてもいないのに「北朝鮮とは経済的、文化的問題に関して協力関係にある」と話し始め、「だが核問題での協力は絶対にない」と断言した。
モノもなければ、情報もない。そして将来への展望もない。北朝鮮駐在の外交官の毎日は、こうして過ぎていく。
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