香港当局のゼロ・コロナ政策がキャセイ航空パイロットの心を蝕む
航空業界では、精神的な問題の兆候があれば再就職が困難になりかねないだけに、極度のストレスは重大な問題だ。
あるパイロットは語る。「少しストレスがあった、と言うことのリスクは何だろう」。パンデミックが始まって以来、香港以外のホテルの部屋に200泊以上も隔離されたという。「健康に影響が出るのだろうか。退職後、何か精神的な問題で辞めたことがあるかと聞かれるのか」
パイロットらは、政府が課しているパンデミック対策ルールの中には曖昧なものがあり、フラストレーションがたまると話している。たとえばパイロットは香港に戻ってから3週間、「不必要な社会的接触」を避けるよう求められる。だが、その見返りとして休暇を与えられるわけではない。
キャセイはロイターに対する声明の中で、10月末以降、パイロットの退職が通常の水準よりも増えていることを認めている。
「残念ながら、フランクフルトの一件が心情的に悪影響を与えている」とキャセイは言う。
厳しい乗務スケジュール
香港では米国や英国を含む多くの離発着地を「ハイリスク」に分類している。そのため、そういった国からの乗客を香港に運んできたキャセイのパイロットは、ホテルで2週間の隔離生活を送らねばならない。
こうしたフライトの乗員を確保するため、キャセイでは2月、希望者限定で「クローズド・ループ」式の乗務スケジュールの運用を開始した。5週間連続でホテルに滞在したまま、乗務以外は外出もスポーツジムの利用も禁じられ、それから2週間は自宅で過ごすという内容だ。
「少しでも稼ごうと思って、このスケジュールに参加した。昨年の50%減給で生活がぐっと苦しくなったから」と語るのは、2回の「クローズド・ループ」を経験した後、最近退職したパイロットだ。「もう、5回か6回目のクローズド・ループに入っている仲間がいる」
キャセイは25日、このプログラムの参加希望者が不足しているため、12月の需要ピーク期に香港行きフライトの一部がキャンセルになる見込みだと発表した。