香港当局のゼロ・コロナ政策がキャセイ航空パイロットの心を蝕む
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アジア最大の航空会社の1つである香港のキャセイパシフィック航空が、身内からの抵抗にあっている。パイロットらが、「ゼロ・コロナ」を掲げる香港の厳しい検疫方針によりメンタルヘルスが脅かされ、ストレス増大と退職につながっていると声を挙げているのだ。写真はキャセイの航空機。2020年10月、香港国際空港で撮影(2021年 ロイター/Tyrone Siu)
アジア最大の航空会社の1つである香港のキャセイパシフィック航空が、身内からの抵抗にあっている。パイロットらが、「ゼロ・コロナ」を掲げる香港の厳しい検疫方針によりメンタルヘルスが脅かされ、ストレス増大と退職につながっていると声を挙げているのだ。
キャセイパシフィック航空は前週、内規違反を理由に3人のパイロットを解雇した。この3人は独フランクフルトでの乗り継ぎ待機中にホテルの部屋を離れ、その後、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)陽性と診断された。
香港政府は、パイロットの家族と接触のあった270人以上(学童含む)を、国営隔離施設の狭い個室に強制収容するという対応を取った。
パイロットの一部は隔離解除後、割り当てられた最初の乗務に関して、操縦できる状態ではないと申告した。
この極端な例が浮き彫りにしているように、他のアジア諸国が徐々に対策を緩和している一方で、「ゼロ・コロナ」政策に基づく中国のパンデミックへの警戒措置は、キャセイのパイロットらに困難な労働条件を突きつけている。パイロットらは全員、ワクチン接種を完了している。
「もう持ちこたえられない」
キャセイと競合するオーストラリアのカンタス航空では、厳しい乗り継ぎ待機方針の緩和に着手している。だが香港政府は、中国本土と歩調を合わせて検疫ルールをさらに厳格にすることで、国境を越えた移動を中国政府に認めさせたい考えだ。
ルールの厳格化の背景には、南アフリカで拡大しつつある新たな変異株「オミクロン」への懸念の増大がある。オミクロン株は香港とボツワナなどでも確認され、複数の国が国境管理の強化と検査の厳格化を発表するに至った。
キャセイのパイロットの1人は匿名を条件にロイターの取材に応じ「このまま持ちこたえられる気がしない」と語る。「家族や友人が隔離されるかもしれないというストレスだけでも、くじけそうになる」
これ以外にも複数の現役もしくは退職したばかりのパイロットが、1年前に58%もの恒久的な賃金引き下げが行われて以来、士気は低下し、辞める人が増えているとロイターに語った。