最新記事

オーストラリア

海岸から80キロ上流に干からびたサメの幼魚 「極端に過酷な自然」の見本と専門家

Baked Baby Bull Shark Found 30 Miles From Coast: 'Nature at Her Most Extreme'

2021年12月1日(水)16時53分
ハナ・オズボーン
干からびたサメ

蒸発する沼と一緒に干からびたと思われるサメの幼魚 AMCS/L.GUIDA

「カラカラに干からびたオオメジロザメの幼魚」が、オーストラリアのノーザンテリトリー準州の、最も近い海岸から30マイル(約48キロメートル)以上離れた場所で見つかった。

オーストラリア海洋保護協会所属のサメ研究家、レオナルド・グイダ博士は、その姿は「自然が見せる最も過酷な姿」だと指摘し、これほどの事例はこれまで見たことがないと述べた。

この干からびたオオメジロザメは、ノーザンテリトリー北西部を流れるデイリー川流域にある三日月湖の泥の中で9月に見つかったと、グイダは本誌に語った。グイダの推定では、幼魚はここに数週間前からいたのだろうと言う。当時のこの地域の気温は摂氏35度前後だった。

211201shark.png AMCS/L.GUIDA

水はあっという間に干上がる

洪水のあと、あるいは川が流れを変えたあとにできる孤立した三日月湖を、オーストラリア語でビラボンという。オーストラリアでは、季節の変化に伴ってこうしたビラボンが形成され、一時的に水をたたえるが、気温の上昇と共に干上がるのが常だ。この幼魚もビラボンと共に干上がったのだろう。グイダによれば、水深が浅い場合、ビラボンはあっという間に干上がることがあるという。

グイダは、干からびたサメの写真をツイッターに投稿し、こう書いた。「干からびたオオメジロザメの幼魚を発見したのは、川の本流から1キロ離れ、海岸からは80キロも上流にある、辺ぴなビラボンでのことだ。地球における生命の営みの過酷さを思い知らされた」

オオメジロザメは、世界の熱帯や亜熱帯地域にある河川で生まれ、数年をそこで過ごす。その後は成長に伴い、川を下って海に移動するが、出産のために再び川に戻ってくる。淡水でも長く生きられるサメなのだ。

「雨期の降水で増水した水位が急に下がると、この幼魚のように川の本流に戻るタイミングを失い、ビラボンに閉じ込められてしまうことがある。そうなると、次の雨期が来て再び周囲が水に浸かるのを待つしかないが、このサメは残念ながら、生存に適さないビラボンを選んでしまった」

グイダによれば、大きさから判断する限り、このオオメジロザメは1歳以下だったとみられる。オオメジロザメは、出生時の体長が約45〜60センチで、成体では最大約3.35メートルにまで成長するものもある。

今回のような状態のサメが見つかるのは異例だとダイダはいう。「どんな種類のサメであれ、私がこれまで見かけた干からびた個体は、どこかの海岸で腐乱したか、市場で売られているものだった」とグイダは言う。「この幼魚がこれだけ海岸から遠い場所で見つかったことを考えると、自然の厳しさを改めて痛感させられる」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

輸出規制厳格化でも世界の技術協力続く=エヌビディア

ビジネス

ラトニック氏の金融会社がテザーと協議、新たな融資事

ビジネス

米、対中半導体規制強化へ 最大200社制限リストに

ワールド

ヒズボラ、テルアビブ近郊にロケット弾 ベイルート大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中