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展望2022・コロナ対策 緊急事態宣言の基準は医療ひっ迫、情報発信で行動変容促す

2021年12月31日(金)12時48分
年末の浅草寺・仲見世通り

政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会メンバーで経済学者の小林慶一郎慶応大教授は、ロイターとのインタビューで、行動制限の基準は医療のひっ迫状況であり、その状況を逐次発信することで市民に自発的な行動変容を促すことが望ましいと述べた。都内で24日撮影(2021年 ロイター/Issei Kato)

政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会メンバーで経済学者の小林慶一郎慶応大教授は、ロイターとのインタビューで、行動制限の基準は医療のひっ迫状況であり、その状況を逐次発信することで市民に自発的な行動変容を促すことが望ましいと述べた。来年以降、コロナと共存する「ウィズコロナ」が始まると想定されるが、実質無利子・無担保融資の事後処理を適切に行い、成長産業へのシフトを進めることが重要だと語った。

感染力の強い「デルタ株」が引き起こした「第5波」が収束し、緊急事態宣言が全面解除されてから約3カ月。国内でオミクロン株の市中感染が確認され「第6波」への警戒が強まってきた。年明け以降、同株が面的に感染拡大した場合、政府が再び行動制限の強化を検討する可能性もある。

小林氏は、ワクチンを2回接種した高齢者もその効果が薄れる時期になってきたと指摘。まずは感染症を抑え込むためのブースター接種や、経口治療薬の開発といった医療政策を進めるとともに、病床など医療体制の充実をはかることが重要だと述べた。

一方、行動制限は「医療のひっ迫が起きるかどうかが基準となる」として即座に踏み出すことには慎重な姿勢だ。「第5波の時、8月下旬から急激に感染者が減ったが、医療ひっ迫が現実に起き、自分が感染しても診察してもらえない状況だと皆が認識したところで行動が変わった。そういう医療の状況をしっかり伝えることで、国民の意識と行動が変わるというのが一番望ましい。その方が経済への負担は少ない」と語った。

ネックは実質無利子・無担保融資の事後処理

オミクロン株に対する不安が去っても、「ウィズコロナ」の状況になることが想定される。この中で社会経済活動をどのように活発化させていくか。小林氏は、接触型の産業が縮小する中、非接触型の産業を成長させて雇用を吸収することがグランドデザインになると話した。例えば、外食産業はコロナ前に比べてマーケットが小さくなることが予想され、それに対応して会社や店の数を少なくし、縮小均衡の方向に行かなけれならないという。

その際には「実質無利子・無担保融資の事後処理をどのようにするかがネックになる」と指摘。その上で「生産性が低く、生き延びられる見込みが少ない企業が経済全体の足を引っ張ってはならない。不良債権処理の過程で廃業が増えても金融機関の経営責任を問わないという形で速やかな処理を促すということが必要だ」と持論を展開した。

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