生涯学習の場へと変わりつつある日本の大学院
多様性のなかでイノベーションは生まれる designer491/iStock.
<学生からは敬遠されてきている博士課程だが、社会人が占める割合は大きく伸びている>
今年は、日本人のノーベル物理学賞受賞が決まった(真鍋淑郎氏、国籍はアメリカ)。大変な快挙で、イノベーションを起こせる知的人材が社会の発展には不可欠だ。その候補となるのは博士号取得者だが、日本では数が少ない。人口あたりの博士号取得者数は欧米の半分以下で、他国とは反対に減少の傾向すらある。
その背景要因として、学位取得後も不安定な非正規雇用(非常勤講師、研究員など)しかなく、大学院博士課程が敬遠されているからではないか、と言われている。実態はまさにそうで、統計で見ても博士課程入学者は2003年の1万8232人をピークに減少に転じ、2020年は1万4659人となっている。20年弱で2割の減少だ。博士号を取っても行き場がないことが知れ渡っているためだろう。
だが、大学院入学者は20代前半の若者だけではない。年輩の社会人もいるし、最近は留学生も増えている。博士課程入学者数がどう変わったかを、一般学生、社会人、留学生、という3つの群に分けてみると<図1>のようになる。
上述のように、入学者の総数はピークの2003年から2020年にかけて2割減った。だが減少幅が大きいのは一般学生で、修士課程からストレートで上がってくる学生はこの期間で半減している(1万1637人→5703人)。