生涯学習の場へと変わりつつある日本の大学院
その一方で、社会人の入学者はかなり増えている。3952人から6335人に増え、2020年では一般学生より多い。今となっては、博士課程入学者のマジョリティーは社会人だ。大学院博士課程も成人のリカレント教育の場になりつつあるようで、結構なことだ。なお設置主体別に見ると、興味深い事実が出てくる。<図2>は、国公私別に入学者の内訳がどう変わったかを図示したものだ。
一般学生が減り社会人が増えているのは国公私共通だが、その傾向は公立で顕著となっている。一般学生の割合が73%から32%へと減少し、社会人の割合は16%から57%へと増加をみている。リカレント教育の先端を行っているのは公立大学で、地域と密着しているがゆえに、住民のニーズを反映する度合いも高いと見られる。
よく言われるように、現在は生涯学習社会だ。やせ細る18歳人口を奪い合うことに躍起になる大学は淘汰されるしかない。20年後の18歳人口は60万人ほどで、現在のおよそ半分となる。少子高齢化という人口変動と同時に、社会変化の加速化もリカレント教育の普及を求めている。子ども期に学校で学んだことなど、直ちに陳腐化するのだから。
ここで見たのは大学院博士課程のデータだが、学部段階でも同じ変化が進行するとみられる。若者だけでなく、社会人、高齢者、外国人など、多様な学生がキャンパスに溢れることが望ましい。そうした多様性の中で、イノベーションは生まれやすくなる。
<資料:文科省『学校基本調査』>