「消えた」香港人著名活動家は中国が仕掛けたハニートラップの犠牲者か
Chinese Honey Trap Rumor Fuels Hong Kong Paranoia As Activist 'Disappears'
ウォンはこうした見方を「馬鹿げている」と一蹴し、かつての活動家仲間を避けてなどいないと主張した。「私はいつだって連絡のつく状態だ。携帯電話は常に電源を入れてある。使うのをやめたのはフェイスブックだけで、それは個人的な理由から近況やニュースの共有をやめることにしただけだ」と彼は語った。
中国がイギリス国内に「侵入」していることを示す小さな痕跡は幾つかあるものの、大規模な諜報活動を裏づける具体的な証拠はほとんどない。
イギリス政府は5月、公務秘密法を改正する計画を発表。サイバー時代に合った内容に改定し、ロシアと中国による諜報活動に対抗する点に重点を置く内容に強化する方針を明らかにした。国内の外国勢力の影響力を把握し、介入や諜報活動を阻止するための枠組みの構築も提案された。
政府は諸外国の工作員の排除にも取り組んでいる。テレグラフ紙は2月、イギリス政府が国内でジャーナリストに扮して働いていた中国人スパイ3人を国外追放したと報じた。3人は中国国家安全部の工作員だったという未確認の報道もある。
海外で活動する中国の当局者や工作員は長年、国際社会による中国共産党批判を和らげようと試みてきた。中国政府は(香港の限定的な政治的自由の終わりを意味する)国家安全維持法について、適用範囲は国内にとどまらないと主張しており、実際に香港当局は既に、国外在住の反政府活動家に逮捕状を発行している。
中国の工作員による監視が最大の懸念
中国共産党が香港への取り締まりを強化したことを受けて、1月以降、約6万5000人の香港市民がイギリスに亡命を申請している。またイギリス政府は1月末から、新たな特別ビザの申請受付を開始した。1997年に香港がイギリスから中国に返還される前に生まれた、かつてのイギリス市民(すなわち「イギリス海外市民」のパスポートを持っている人々)が、イギリスへの長期滞在を申請できるようにする制度(BNO制度)だ。
実質的な市民権付与ともいえるこのBNO制度は、香港の民主活動家たちにとっての命綱だった。
だが中国の工作員たちが、この制度を悪用しようとしているという報告が複数ある。英内務省は本誌に対して、2021年に入ってからどれぐらい、こうした試みがあったのかを明らかにしなかった。
香港出身者を支援する団体「ホンコナーズ・イン・ブリテン」の創設者、サイモン・チェンは本誌に、イギリス在住の香港出身者が「最も懸念している」のは、「イギリス国内にいる中国共産党工作員による監視」だと語った。
ウォンが活動から身を引いたことをめぐり、「さまざまな噂があることは知っているし、そうした噂が自分の耳にも入ってきている」とチェンは本誌に語り、さらにこう続けた。「真相はよく分からない。中国の工作員が、著名活動家の元に女性を派遣してハニートラップを仕掛けるのは、十分にあり得ることだと思う。彼らならやるだろうとは思うが、それを立証するのは難しい」