最新記事

米社会

子供へのワクチン計画が進行中だが、30%もの親が「様子見」と判断

MANY PARENTS SHUN VACCINE

2021年11月5日(金)12時41分
アダム・ピョーレ

211109P46_WCN_03.jpg

ワクチン副反応のリスクより感染時の重症化リスクが大きい ERIN CLARKーTHE BOSTON GLOBE/GETTY IMAGES

デイトン小児科病院(オハイオ州)の感染症部門主任マイケル・クラットによれば、ここ数カ月に診てきた子供は、12歳以上の子も含めて、みんなワクチン未接種だった。「入院した子に幾晩も眠らずに付き添って取り乱している親たちを見ると、本当に大変だ」と話し、「5歳から11歳までの子供へのワクチン接種が許可されたら、すぐにうちの下の娘にも受けさせる」と続けた。

だが、子供の感染者が急増しているにもかかわらず、多くの親は、ワクチンの副反応を恐れるか、ワクチンの開発から認可までの期間があまりに短くて安全性が確認されていないと懸念し、わが子へのワクチン接種には消極的だ。

スタンフォード大学病院で5~11歳児対象の治験を進めているイボンヌ・マルドナードは、新型コロナワクチンの開発と治験が迅速に進められた一因は、治験に必要な資金が潤沢にあったことだと指摘する。

また「新型コロナワクチンの治験は、ほかのワクチンと同じ安全な手順に沿って行われている」と彼女は言い、「おそらく歴史上のどのワクチンよりも厳密な精査を経て完成したワクチンだ」と語った。

副反応は稀で多くが治療可能

アメリカ小児科学会の会長を務める小児科医リー・サビオ・ビアースは、これまでに新型コロナワクチンを投与された1000万人超の青年期の若者の大半について、副反応は軽いものだったと述べた。多くの場合、最も重い副反応でも微熱や軽い風邪のような症状で、しかも症状はすぐに改善されたという。

成人の場合でも、危険な合併症が起きるのは極めてまれなケースだ。CDCによれば、アメリカでは20年12月14日~21年9月27日の間に累計3億9000万回を超えるワクチン接種が実施されたが、接種後に死亡した人は8164人(全体の0.0021%)。その大半は、より詳しく調べた結果、ワクチン接種が原因ではなく、偶発的な死と判断されている。

注目すべき例外は、アメリカではジョンソン・エンド・ジョンソン製のワクチン接種後に、血小板減少を伴う血栓症が(約1500万回の投与のうち)47例確認されたことだ。この合併症と一部の死には「妥当な因果関係」が認められるとCDCは述べている。

そのほかの合併症は、確かに恐ろしいが治療は可能だ。

アメリカではワクチン接種を受けた100万人につき約2~5人が、アナフィラキシーとして知られる重篤なアレルギー反応を起こしたが、多くの場合は迅速に治療が行われている。またジョンソン・エンド・ジョンソン製ワクチンの接種を受けた一部の人には、筋力の低下や麻痺を引き起こすギラン・バレー症候群が見られた。恒久的な神経障害が残る例も一部にあるが、これも多くの場合は完治する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中