最新記事

米社会

子供へのワクチン計画が進行中だが、30%もの親が「様子見」と判断

MANY PARENTS SHUN VACCINE

2021年11月5日(金)12時41分
アダム・ピョーレ

ファイザー/ビオンテックまたはモデルナ製ワクチンの接種を受けた若者については、30歳未満の男性が心筋炎または心膜炎を発症した例が複数報告されている。だがビアースは、これらは「並外れてまれ」な例(100万件当たり12~13例程度)であり、多くは「極めて軽度」だと説明する。

子供の場合は、ワクチンの副反応よりも、新型コロナ感染症による心筋炎で入院する可能性がずっと高いとビアースは指摘。しかもその場合は症状が「はるかに重くなりがち」で、入院期間も長期に及ぶ可能性が高いという。

「それらのリスクや利点全てを比較すると、新型コロナ感染のリスクはワクチン副反応の潜在的リスクをはるかに上回る」とビアースは考える。「FDAでもCDCでも、多くの専門家がデータを慎重に検証してきた。その結果、使用が承認されている全ての年齢グループについて、新型コロナワクチンは安全かつ効果的だと強く確信している」

ギャラップ社による最新の世論調査によれば、9月上旬の時点でアメリカの成人の75%が少なくとも1回のワクチン接種を受けている。だが支持政党によって接種率には大きな差があり、民主党支持者は92%が接種を受けたと回答したのに対して、共和党支持者はわずか56%(無党派は68%)だった。

ドナルド・トランプ前大統領の時代に、新型コロナは政争の具となった。民主党はトランプが公衆衛生上の脅威を軽んじていると非難し、トランプは民主党が脅威を誇張していると非難した(多くの場合、トランプの言い分は感染症の専門家の勧告と矛盾していたのだが)。

専門家がリスクを正直に話していない?

今もFOXニュースの人気司会者たちは、ゴールデンタイムに放送される番組の中で、専門家の提言に繰り返し異論を唱えている。彼らは、専門家たちがワクチンのリスクについて正直に話していないと示唆し、接種率を向上させるためのバイデン政権の取り組みは個人の自由の侵害であり、税金の無駄遣いだと息巻いている。

いずれにせよ、根っからの反ワクチン派が一定数いることは間違いない。彼らは絶対に接種を受けず、自分の子にも受けさせない。そうした人たちに対し、公衆衛生当局が使える最後の手段が「義務化」だ。

9月に新学年が始まって学校が再開されるまでには、少なくとも児童の過半数がワクチン接種を済ませているだろうと、公衆衛生当局は期待していた。しかし米公衆衛生学会のジョージズ・ベンジャミン事務局長によれば、秋になれば多くの州議会で新たな会期が始まり、ワクチン接種の義務化をめぐる議論がヒートアップするのは確実だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

新型ミサイルのウクライナ攻撃、西側への警告とロシア

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 9
    巨大隕石の衝突が「生命を進化」させた? 地球史初期…
  • 10
    バカげた閣僚人事にも「トランプの賢さ」が見える...…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中