子供へのワクチン計画が進行中だが、30%もの親が「様子見」と判断
MANY PARENTS SHUN VACCINE
多くの混乱は、子供へのワクチン接種を支持する医学的な論拠が2つあることから生じているが、いずれの論拠にも、リスクという厄介な問題が含まれている。
1つ目の論拠は、公衆衛生の専門家がしばらく前から唱えているもので、子供にワクチンを接種すれば、ウイルスが社会全体に広がるのを抑制できるという考えだ。子供が新型コロナで重症化または死亡するリスクは大人よりもずっと低いが、感染してウイルスを拡散するリスクは大人と同様にある。だが子供へのワクチン接種に懐疑的な親たちは、他人を守るためにわが子を危険にさらせと言うのかと反発している。
もう1つの論拠は、変異株のデルタ株による感染が拡大するにつれて盛んに言われ始めたもので、若年層の感染リスクは当初考えられていたよりも高いという主張だ。実際、若年層の感染者は急増している。
アメリカの子供の死因で最も多いのは癌(年間約1800人)で、2番目が心臓疾患(約600人)だ。しかし米疾病対策センター(CDC)の推計によると、この2年間に新型コロナで死亡した子供は約570人で、入院を必要とした子供は約2万2000人に上る。
子供の死を防ぎたいかという問いに、親が迷ってすぐに答えられないような状況はおかしい。保護者が納得するまで説明するか、さもなければ接種を義務化する必要がある。
昨年は、ロックダウンや自宅学習などの対策により、子供がウイルスに接触する機会が少なかった。そのため子供は感染しにくく、重症化しにくいという誤った印象が生まれたのかもしれない。
重症化した子を「大勢見た」
だが今年の夏の終わりから初秋にかけて、デルタ株の流行や対面授業の再開をきっかけに、小児科の患者数が急増した。新型コロナの感染が確認されて入院した10代以下の患者数は、8月には主にデルタ株の影響で早くも増加していたが、9月に新学期が始まると新規感染者数は週に25万人以上にまで激増し、昨冬の急増時を上回るレベルに達した。
「2021年になって明確に分かってきたのは、子供の新型コロナを深刻に受け止めなければならないということだ」と言うのは、ヒューストンにあるテキサス小児科病院の病理学主任ジェームズ・バーサロビックだ。同病院では、感染拡大以来、新型コロナの子供の感染者を1400人も受け入れてきた。「ICU(集中治療室)や救急センターに送られてくる子、人工呼吸器を装着した子供を大勢見てきた」