ミャンマー、禁固11年判決出たばかりの米国人記者釈放 米特使らの訪問が影響か
軍政、硬軟両様の外交戦術
実刑判決直後の釈放という今回の突然の措置については、国連をはじめとする各方面からの批判、釈放要求に応じることで軍政が人権に配慮し外交関係を重視するとの姿勢を内外にアピールする狙いがあったのは間違いない。
その背景には深まる国際社会からの孤立、経済制裁などがじわじわと軍政にプレッシャーとしてのしかかってきたとの見方も出ている。
しかし一方では、ミャンマーも参加する東南アジア諸国連合(ASEAN)による特使派遣での仲介・調停には応じる気配をみせないなど頑なな姿勢を続けており、「硬軟両様」の外交戦術という軍政の思惑が見え隠れしている。
今後はアウン・サン・スー・チー氏の経済顧問として同じく逮捕されて公判中のオーストラリア人エコノミスト、シーン・タネル氏の身柄の扱いがどうなるかが注目される。豪政府や国際社会の釈放要求に軍政がどう応えるか、さらに多数が依然として拘束中のミャンマー人報道関係者らの釈放がどうなるかが焦点となるだろう。
[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など