特定の「誰か」を猛烈に攻撃する善良な市民たち...集団心理の脅威を名著に学ぶ
「自分で考えること」の難しさ
『大衆の反逆』
著者:オルテガ・イ・ガセット
翻訳:神吉敬三
出版社:筑摩書房
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「自分は人と同じ意見になるのはイヤ」といくら思っていても、結局多くの人は、「まったく人と異なること」には安心できません。スペインの哲学者であるオルテガ・イ・ガセットは『大衆の反逆』のなかで、そうした「大衆像」を克明に描きました。
ある共通の精神状態をもった群衆が、より「全体的な総意」を形成するような状態に膨れてくると、そこに「大衆」が生まれます。この大衆は"平均的な人"の考えを代表していて、「普通はこうする」「普通はこう考える」という空気をつくります。
かれらにとってそれは「社会の常識」なので、その考えと異なるものは排除されてしまう。それがどんなに世の中を良くしようとするものであっても、です。
そうしているうちに、大衆の一人ひとりは「自分自身の考え」に自信がもてない状態になってしまった、というのがオルテガの主張でした。究極的には国家に依存し、国がなんとかしてくれるだろうという感覚、もっと言えば、国がなんとかできないならどうしようもないだろうという諦めにつながっているのではないか、と考えたのです。
何となく、現代の私たちの感覚でも、イメージしやすいですよね。国のレベルまでいかなくても、会社が、上司がこう言っているから、会社がなんとかしてくれるだろう、といった気持ちがどこかにあったりしませんか?
だからこそ、他でもない自分がよりよく生きたいのであれば、「大衆」であることをやめて、個として立ち上がらなくてはならないのです。いままで自分を支えてきた「大衆の空気」を捨てるのですから、それは大変な道のりになるでしょう。しかし、それが自分の運命を切り開くことなのだ、という力強いメッセージを、本書は伝えているのです。
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リベラルアーツの本は、なじみがないものも多く、近寄りがたいかもしれません。
でも、現代まで生き延びてきた「教養の言葉」たちには、私たちが生きていく意味に直結する、本質的な「人間」が描かれています。
flier編集部
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