ネイビー・シールズ地獄の訓練で「嘘だろ?」...衝撃の展開が示したリーダーシップの重要性
EXTREME OWNERSHIP
ボートクルー・リーダーも例外ではなかった。彼はリーダーとして成績に責任があるのに、「それがどうしたの」という顔をしている。俺はツイてないだけだ、と言わんばかりに。
自分がどんなに頑張っても仕事を果たせない、駄目なチームを任されてしまった、と。
私は、ボートクルーVIのリーダーをずっと見ていた。指導力を大幅に改善できなければ、彼は卒業できないだろう。
シールズの上級上等兵曹は、教官幹部の中でも特に経験豊富で尊敬を集めている下士官だが、彼もボートクルーVIと冴えないリーダーに強い関心を寄せていた。
その彼が今、ボートクルーVIの目も当てられない成績を前に、面白い解決策を提案した。
「1位のボートクルー・リーダーと最下位のボートクルー・リーダーを、交換してみたらどうだろう?」
ボートクルーIIのリーダーは、明らかに不服そうだった。自分がつくり上げ、熟知しているチームを離れるのは嫌に違いない。圧倒的な成績にも、胸を張っていたはずだ。
一方、ボートクルーVIのリーダーは、明らかにうれしそうだった。どうやら、運悪く――自分に非はないのに――成績の悪い者が集まる最悪のボートクルーを任された、と感じていたらしい。自分がどんなに頑張っても、ボートクルーVIを改善することはできないのに、と。
そして今、教官から「ボートクルーIIを引き継げ」と指示された。彼の顔には、「やっと公平に扱われた。新しい任務はきっと楽だろう」という思いがにじんでいた。
「スタンバイ......バスト・エム(全力で取り組め)!」の声で、レースが始まった。
私たちは、ボートクルーがボートを担いでダッシュで浜段丘を越え、それからサーフゾーンへ急ぎ、暗い海中に突入していくのを見ていた。みんなでボートに飛び乗り、猛然とオールを漕ぐ。
打ち寄せる激しい波に逆らって、ボートを空にし、また全員を乗せて、ビーチまでオールを漕ぐ。教官たちの車のヘッドライトに反射して、ボートの黄色い縁取りが光る。もうボート番号は見えない。
だが、2隻のボートがほかを引き離し、ほぼ互角にトップ争いをしているのが見えた。教官たちがトラックでボートを追い掛けると、岸から800メートルほど離れた地点から、2隻がビーチに戻ってくるのが分かった。
ヘッドライトがボートを捉え、番号がはっきりと見えた。トップで戻ってきたのは、なんとボートクルーVIだった。ゴールまでずっと首位を保ち、ボートクルーIIに競り勝って、レースを制したのだ。