最新記事

テクノロジー

スティーブ・ジョブズが見通した未来、外した未来

4 Things Steve Jobs Was Right About, And 3 He Got Wrong

2021年10月6日(水)18時35分
アーティフ・スレイマン
スティーブ・ジョブズ

アップル社のCEOとして基調演説を行うスティーブ・ジョブズ(2002年) Lou Dematteis-REUTERS

<史上最高のテクノロジー予言者スティーブ・ジョブズの没後10年、彼が予想した未来はどの程度実現したのか。その一部を検証してみた>

今年の10月5日、アップルの共同創設者スティーブ・ジョブズがこの世を去って10年が過ぎた。ジョブズは、テクノロジーの将来を見通した史上最も偉大なビジョナリーの1人。彼が設立したアップルは現在、時価総額2兆ドルを超え、世界で最も価値のある企業となった。

ジョブズの偉業は疑いの余地がない。2011年10月5日に亡くなって以来、アップルは繁栄を続けている。株価は10年前の11倍以上に上昇した。

しかし、ジョブズの将来の予測は、その多くが実現したが、外れたケースもある。その両方のケースの主なものを紹介しよう。

リモート時代を先取り

ワールド・ワイド・ウェブの考案者であるティム・バーナーズ=リーがハイパーテキストを開発する数年前、1985年のプレイボーイ誌のインタビューで、ジョブズはこう語った。「ほとんどの人が自宅用にコンピュータを購入するとしたら、その理由として最も説得力があるのは、全国的な通信ネットワークにリンクできることだ」。

当時、コンピュータは主に仕事で使用されていたが、それすらも一般的ではなかったのに。

「自宅用にコンピュータを購入する主な理由は、自宅で仕事をしたい、または自分や子供のために教育用ソフトウェアを使いたい、ということだ。どちらかの理由でコンピュータの購入を正当化できない場合、他の唯一の考えられる理由は、単にコンピュータを使えるようになりたいということだ」と、ジョブズは言った。

「何かが起きていることはわかっているが、それが何であるかが正確にわからないので、学びたいというわけだ。でもそれは、いずれ変わるだろう。コンピュータはほとんどの家庭で不可欠の存在になる」

パソコンが日用品に

その1年前の1984年、ジョブズは子供が幼い頃からコンピュータを使うようになると予測し、ニューズウィークの特別版アクセス誌にこんな話をした。「あなたは10歳の時にコンピュータを手に入れ、何とか電源を入れる。すると、コンピュータが『私はどこにいるの?』と問いかけるので、『ここはカリフォルニアだよ』と教えてあげることになるだろう」

■情報過多

ユニバーサルな通信ネットワークへの接続がもたらした結果の1つは、多すぎる情報の負担だ。ジョブズはそれも予見していた。

「私たちは情報経済の世界に住んでいるが、情報社会に住んでいるとは思わない。人々は以前よりもものごとを考えなくなった。それは主にテレビのせいだ。読書をしなくなったし、あまりものを考えなくなっているのは確かだ」と、ジョブズは1996年にワイアード誌に語った。

私たちは、インターネットがクリックひとつでこれまで以上に多くの情報をもたらすものになることを予見したが、大小を問わず日常的な仕事をどれほどインターネットに依存するようになるかまでは完全に認識していなかった。

同じインタビューで、ジョブズはこう付け加えた。「だから、より多くの情報を得るためにウェブを使用する人はほとんどいないと思う。私たちはすでに情報過多の状態にある。インターネットが提供できる情報量に関わらず、ほとんどの人は消化できないほどたくさんの情報を受けとっている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

製造業PMI11月は49.0に低下、サービス業は2

ワールド

シンガポールGDP、第3四半期は前年比5.4%増に

ビジネス

中国百度、7─9月期の売上高3%減 広告収入振るわ

ワールド

ロシア発射ミサイルは新型中距離弾道弾、初の実戦使用
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中