最新記事

テクノロジー

スティーブ・ジョブズが見通した未来、外した未来

4 Things Steve Jobs Was Right About, And 3 He Got Wrong

2021年10月6日(水)18時35分
アーティフ・スレイマン

■電子商取引

ジョブズは、インターネットがある産業に特に大きな革命をもたらす可能性があることを理解していた。それは商取引だ。

売り手がデジタルへの移行の最大の受益者になるとジョブズは予測し、1996年のインタビューでワイアード誌に語った。「客は多くの店に足を運ばなくなるだろう。そしてインターネットを通じて買い物をするようになるだろう!」

しかし、そのインタビューで、ジョブズはインターネットが出版に与える影響を過小評価し、アマゾンのような小売業者と一緒にソーシャルメディア企業がウェブを支配し続けることを重要視しなかった。

■ジャストインタイム(JIT)方式

同様の趣旨で、ネット上ではデータがほぼ瞬時で流れるため、それが日常生活のペースを完全に変えることをジョブズは指摘。伝説的なたとえ話を語った。

「今、ディーラーが『ご希望の車は1週間では入手できません。3カ月かかります』と言うとしよう。あなたは『ちょっと待って、座席が紫色の革張りのピンク色のキャデラックを注文したい。1週間で手に入らないのはどうして?』と聞く。するとディーラーは『製造しなくてはならないからです』と言う。あなたは『今、キャデラックを製造しているのか?それなら今すぐピンク色に塗ればいいじゃないか』と言う。するとディーラーは『ピンク色の車をご希望だとは知りませんでした』。そこで、あなたは『それじゃ今教えるよ。ピンク色の車がほしいんだ』と言う。するとディーラーは「ピンク色の塗料がありません」と答え、塗料のサプライヤーには納品までリードタイムが必要だと言う。あなたは尋ねる。『塗料メーカーは今、塗料を製造中なのか?』そして、ディーラーは『はい、それを依頼するまでに2週間かかります』と答える。あなたが『革の座席のほうは?』と聞くと、『やれやれ、紫色の革とは。3カ月はかかりますよ』とディーラーは言う」

「このやりとりからわかるのは、問題は物の製造にかかる時間ではないことだ。問題は情報がシステムを通過するまでにかかる時間だ。一方、デジタル情報は光の速度か、それに非常に近い速度で動く」

全否定したツールが人気に

■スタイラスペン

ジョブズは、アップルのティム・クックCEOと長年CDO(最高デザイン責任者)を務めたジョニー・アイブを打ち負かすためにいくつかの予測を行った。その最も悪名高い例は、ペン型の入力デバイス、スタイラスペンに対する悪口だ。

2015年にアップルペンシルがアップルのタブレット端末iPad Proと一緒に発売されたとき、アップルは、ジョブズがほぼ10年前に口にした悪口雑言をあえてプロモーション用に再現してみせた。

「スタイラスペンなんて誰がほしがるんだ?」 2007年に第1世代iPhoneを発表した際に、ジョブズはこんな質問を投げかけた。

「買わなくちゃいけない、片付けなくちゃいけない、それからなくす。むかつくよな!誰もスタイラスなんかほしくない」

■大画面

アップルが遅ればせながらスタイラスペンに対するジョブズの否定的な見方に逆らったのは、電話とタブレットの画面が着実に拡大していたからだ。アップル幹部は、スタイラスペンは必要になると考えた。

ジョブズは、携帯型デバイスは一定のサイズを超えてはならないと断言。2010年の電話会議中に、7インチのタブレットにはサンドペーパーを付けるべきだ、そうすればユーザーが指先を細く削ることができるから、と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中