スティーブ・ジョブズが見通した未来、外した未来
4 Things Steve Jobs Was Right About, And 3 He Got Wrong
■電子商取引
ジョブズは、インターネットがある産業に特に大きな革命をもたらす可能性があることを理解していた。それは商取引だ。
売り手がデジタルへの移行の最大の受益者になるとジョブズは予測し、1996年のインタビューでワイアード誌に語った。「客は多くの店に足を運ばなくなるだろう。そしてインターネットを通じて買い物をするようになるだろう!」
しかし、そのインタビューで、ジョブズはインターネットが出版に与える影響を過小評価し、アマゾンのような小売業者と一緒にソーシャルメディア企業がウェブを支配し続けることを重要視しなかった。
■ジャストインタイム(JIT)方式
同様の趣旨で、ネット上ではデータがほぼ瞬時で流れるため、それが日常生活のペースを完全に変えることをジョブズは指摘。伝説的なたとえ話を語った。
「今、ディーラーが『ご希望の車は1週間では入手できません。3カ月かかります』と言うとしよう。あなたは『ちょっと待って、座席が紫色の革張りのピンク色のキャデラックを注文したい。1週間で手に入らないのはどうして?』と聞く。するとディーラーは『製造しなくてはならないからです』と言う。あなたは『今、キャデラックを製造しているのか?それなら今すぐピンク色に塗ればいいじゃないか』と言う。するとディーラーは『ピンク色の車をご希望だとは知りませんでした』。そこで、あなたは『それじゃ今教えるよ。ピンク色の車がほしいんだ』と言う。するとディーラーは「ピンク色の塗料がありません」と答え、塗料のサプライヤーには納品までリードタイムが必要だと言う。あなたは尋ねる。『塗料メーカーは今、塗料を製造中なのか?』そして、ディーラーは『はい、それを依頼するまでに2週間かかります』と答える。あなたが『革の座席のほうは?』と聞くと、『やれやれ、紫色の革とは。3カ月はかかりますよ』とディーラーは言う」
「このやりとりからわかるのは、問題は物の製造にかかる時間ではないことだ。問題は情報がシステムを通過するまでにかかる時間だ。一方、デジタル情報は光の速度か、それに非常に近い速度で動く」
全否定したツールが人気に
■スタイラスペン
ジョブズは、アップルのティム・クックCEOと長年CDO(最高デザイン責任者)を務めたジョニー・アイブを打ち負かすためにいくつかの予測を行った。その最も悪名高い例は、ペン型の入力デバイス、スタイラスペンに対する悪口だ。
2015年にアップルペンシルがアップルのタブレット端末iPad Proと一緒に発売されたとき、アップルは、ジョブズがほぼ10年前に口にした悪口雑言をあえてプロモーション用に再現してみせた。
「スタイラスペンなんて誰がほしがるんだ?」 2007年に第1世代iPhoneを発表した際に、ジョブズはこんな質問を投げかけた。
「買わなくちゃいけない、片付けなくちゃいけない、それからなくす。むかつくよな!誰もスタイラスなんかほしくない」
■大画面
アップルが遅ればせながらスタイラスペンに対するジョブズの否定的な見方に逆らったのは、電話とタブレットの画面が着実に拡大していたからだ。アップル幹部は、スタイラスペンは必要になると考えた。
ジョブズは、携帯型デバイスは一定のサイズを超えてはならないと断言。2010年の電話会議中に、7インチのタブレットにはサンドペーパーを付けるべきだ、そうすればユーザーが指先を細く削ることができるから、と述べた。