中台TPP加盟申請は世界情勢の分岐点──日本は選択を誤るな
ちょうどこのコラムを書いている時間から見て「まもなく」、アメリカで日米豪印4ヵ国からなるQUAD(クワッド)の会議が開催されようとしている。
しかし、このQUADとて、4ヵ国の中のインドは、対中包囲網を形成することには消極的だ。
なぜなら、インドの最大貿易相手国は中国だからである。インド政府が公表した2020-2021年の貿易額は、
1位:中国(大陸+香港)16.3%
2位:アメリカ 11.7%
という、動かしがたい現実を示している。中印の間には国境紛争があるが、小競り合いをしているヒマラヤ山頂は中国にとって利益を生む性格のものではなく、インドの方では「経済的に中国を刺激したくない」と思っている。
そもそもインドのモディ首相はロシアのプーチン大統領と仲が良く、図表2に示すように、中露がトップに立っている上海協力機構の正式メンバーでさえある。
上海協力機構は反テロ・反アヘンなどを目的の一つとしているが、NATOに対抗した性格を持っており、アメリカ側にピッタリ寄り添うなどということを、少なくともモディは絶対にしない。
したがって日米豪印から成るQUADは有名無実だと中国は見ている。
バイデンはアフガンの米軍撤退時における失敗などもあり、気ばかり焦っているだろうが、正直、「強い対中カード」を持っているわけではない。
だからなおさらのこと、TPP議長国である日本が、中国を先に加盟国として認めるような行動に絶対に出てはならないのである。
万一にも中国が先にTPPに加盟することが出来たら、台湾を排除しアメリカを排除するだろう。
したがって日本がやるべきことは、早くから加盟申請をしているイギリスの問題を解決したら、すぐにでも台湾の加盟を認可することである。
それさえ先に実行しておけば、世界はしばらくは安泰だろう。
幸いにして台湾は「中華民国」の名義で申請しているのではなく「台湾・澎湖・金門・馬祖個別関税区」の名義で申請しているので「一つの中国」問題にも触れない。そのことを以てメンバー国を説得してほしいと強く望む。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。
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