最新記事

中国

中台TPP加盟申請は世界情勢の分岐点──日本は選択を誤るな

2021年9月25日(土)16時30分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

加盟するには、加盟国メンバー全員の同意が必要なので、結果、中国がTPPに加盟できる可能性は非常に低いということになる。  

台湾の加盟申請:申請母体は「中華民国」でなく「台湾・澎湖・金門・馬祖個別関税区」

この流れの中で9月22日に台湾がTPP加盟申請に手を挙げたのは非常に大きな意味を持つ。おまけに台湾は「中華民国」として加盟申請をしたのではなく、あくまでもWTO加盟のときと同じ申請母体である「台澎金馬(台湾・澎湖・金門・馬祖)個別関税区」として申請している。

これは非常に賢明なやり方で、北京が言うところの「一つの中国」問題には抵触しない。

台湾政府は今年2月にすでにTPP加盟への意向を示していたが、蔡英文総統自身は「私は総統になった時からTPP加盟を考えていた」と言っている。

ただ台湾はたしかに市場経済を推進する民主主義国家でありTPPが要求する条件を満たすのは容易だろうが、一つだけ難点がある。それは福島産の製品をボイコットしていることで、台湾の国民をどれだけ説得できるかが問題となる。そこをクリヤーできれば、かなり明るい見通しが出てくるだろう。

激怒する中国

台湾のTPP加盟申請を受けて、激怒したのは北京、中国政府だ。

中国共産党機関紙「人民日報」傘下の「環球時報」電子版「環球網」は22日夜、台湾のTPP加盟申請を中国に対する「撹乱(かくらん)だ」との見出しで速報した

外交部の趙立堅報道官は23日の記者会見で、台湾のTPP加盟申請に関し「公的な性質を持つあらゆる協定や組織への参加に断固反対する」と反発し、いかなる国も「一つの中国」原則を守らなければならないと声を張り上げた。

中国のネットには、高市早苗が蔡英文に会いたいと言った時点(9月14日)から、日本メディアの新聞報道の画面が流布していた。

endo20210925121004.jpg

中国のネットで流布している高市早苗氏の新聞報道

ましてや「中華民国」の国旗と日本国国旗を並べてリモートで両者が対談したことに関しては、激しいバッシングがネットを飛び交い、環球網も「トランプに梯子を外された教訓をまだ学ばないのか」と、蔡英文への批難が集中した。

教訓というのは、「トランプに頼り切っていい気になったが、トランプは大統領選で負けたじゃないか。高市は総裁候補に過ぎず、トランプと同じように消えていく人間なんだぞ」という意味だ。

世界情勢の分岐点

バイデン大統領はアフガンから米軍を撤退させ、対中包囲網形成に専念すると誓ったようだが、図表1で見るように中国にはとてつもなく有利に働き、また「AUKUS(オーカス)」に関しては欧米の亀裂を生んで中国を喜ばせている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、6月以来の高水準=ベー

ワールド

ローマ教皇の容体悪化、バチカン「危機的」と発表

ワールド

アングル:カナダ総選挙が接戦の構図に一変、トランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中