最新記事

トルコ

男性だけのお客様、予約しても泊まれません...トルコ・ホテル業界の慣習が物議

2021年9月28日(火)17時13分
青葉やまと

宿泊拒否の理由を説明するよう予約者が求めると、ホテル側は「男性は騒ぎすぎて問題を起こすとみなされているため」と回答したという。性差別的な認識であるとみられるのに加え、OMAT誌は「このホテルはゲストに対し矛盾した態度を取っている」と問題点を指摘する。同ホテルはウェブサイト上で、立地がビーチのナイトクラブに近いことを強調し、クラブで楽しんだあとは「どうぞご自身の(宿泊室の)テラスとバスタブでパーティーを続けてください」と促している。

同様の宿泊ポリシー、トルコの高級ホテルでは一般的

男性客に対して厳しい予約ポリシーを設けているのは、このホテルに限った話ではない。女性の同伴のない男性のチェックインを認めないホテルは、トルコ国内で100軒を超える。宿泊に女性同伴を求める慣習が定着している国は、世界でも極めて例外的だ。

現地旅行業界に詳しいというある人物はニュージーランド・ヘラルド紙に対し、「トルコの高級ホテルのほとんどが似たようなポリシーを持っている」と明かす。同紙はロシア系のツアー会社が取りまとめた男性のみの宿泊を断るホテルのリストを入手している。その数は高級リゾートホテルを含め、トルコ国内で168軒を数える。

問題のリストには、世界的ホテルグループのヒルトン・ワールドワイドが展開する「ダブルツリーbyヒルトン」ブランドの2軒が含まれていた。ヒルトンはヘラルド紙に対し、当該の方針はヒルトンとしてのポリシーに反するものであり、2つのホテルの状況を調査すると回答した。リストはオンラインで一般にも公開されていたが、情報が最新ではなかったとして現在は公開を停止している。

ホテルの真意、同性愛差別ではなく女性保護か

このような対応は一見したところ、男性の同性愛者を避ける目的のようにもみられる。ニュージーランド・ヘラルド紙は、男性2名での宿泊を拒否されたゲストたちが「この不愉快な状況により、彼は同性愛の旅行者たちを差別するというホテルの方針なのだと考えるようになった」と述べ、ゲストの落胆した様子を伝えている。

一方で同紙は、トルコには一部保守的な地域があるものの、隣のシリアに比べればはるかにオープンな気風だとも解説する。とくに海外から多くのリゾート客を迎えているボドルムは、リベラルな価値観で有名だ。

トルコ在住でありLGBTQの活動家であるというある女性は、こうした宿泊ポリシーは同性愛と関係のないものだと説明している。現地では単身の男性客たちによる迷惑行動が問題化しており、各高級ホテルは対応に苦慮しているのだという。トルコはロシアやその他海外からの旅行先として人気であり、独身男性がロシア女性やその他海外からの女性を狙ってつきまとうケースが頻発している。これを避けるためにポリシーが作られるようになったのだという。

ホテル以外でも多くのバーが同様のポリシーを掲げており、女性の来店者に対するハラスメントを防いでいる。女性は「非常にアンチ・ゲイ的かつ偽善的」に感じられてしまう点を認めたうえで、それでもより良い手段のない現状は、このルールのおかげで平穏な時間を過ごせていると述べる。

女性が安心して滞在するための措置であるとの意見に納得する人々がいる一方で、男女差別的だとの批判も起きている。ある読者はOMAT誌の記事に対し、「独身男性は性犯罪の傾向があるとする認識を広め、さらには、こうした男性たちはポリシー不在の状況においては性犯罪に走るとの考えを暗に示すものだ」とコメントし、不快感を示した。

旅先で羽目を外しすぎたゲストたちが招いたルールのようだが、かえって性差別的だとして海外からの旅行客のあいだで困惑が広がっている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中