最新記事

中国

中国共産党の権力闘争と自民党の派閥争い

2021年9月19日(日)15時25分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
自民党総裁選の候補4人

2021年自民党総裁選、公開討論会(日本記者クラブ) Eugene Hoshiko/REUTERS

中国共産党が権力闘争ばかりしていると批判する人が多いが、自民党総裁選を通して見えてきたのは激しい派閥争いで、ポスト欲しさや生き残りのための「乗り換え」もあり、今回は派閥横断となった。中国共産党と自民党の権力闘争の類似点と相違点を考察する。

日本の自民党総裁選で明確になった党内派閥

自民党総裁選で、いやが上にも浮かび上がってきたのは「党内派閥」の構造だ。派閥は主義主張や国家戦略の違いよりも、以下のことを計算して形成されていると言っても過言ではない。

●誰が総裁になるかによって党内人事が決まる。

●誰が総裁になるかによって総選挙でどの党が政権与党になるかが決まるため、それによって自民党議員が生き残れるか否か(再選されるか否か)が決まる。

●自民党から総理大臣が出さえすれば、主としてその総理大臣が所属する派閥から大臣などの要職が選ばれるので(あるいはその総裁候補を応援した論功行賞があるので)、どの総裁候補側に付くかが自民党議員の生命線になる。

このように、派閥は「総理大臣を誰にするか」によって形成され、「わが身の安全と出世」を守り抜くためにあると言っていいだろう。

そして総裁選とは「勝ち馬に乗るための品定め」であり、「品定め」をする際に、自分が所属している派閥からの「乗り換え」だってしてしまう政治信念のなさも散見される。

したがってなおさら、派閥は政治信念よりも「誰を総理大臣にするか」によって分かれた陣営の違いだという色彩が濃いという事実が浮き彫りになる。

その結果今回は、あまりに「勝ち馬の予測」が立てにくくなったなどの諸々の理由により、各所属派閥で支持候補を一本化することができず、「細田派、麻生派、竹下派、岸田派、二階派、石破派、石原派」7派閥のうち岸田派を除いた6派閥が独自投票に委ねられることとなった。

だからと言って自民党内の権力闘争が消えたわけではなく、むしろ暗闘が激しくなっているようにも見える。

中国共産党の権力闘争――江沢民から利権政治と腐敗

ならば、中国はどうなのか。

長いスパンから見た中国共産党の権力闘争に関しては拙著『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』で詳述したように、毛沢東までの権力闘争は「お前が死んで私が生きるか」あるいは「お前が生き残って俺が死ぬか」といった、生死を懸けた戦いだった。

文化大革命などは、当時国家主席だった劉少奇(=劉少奇政権)を倒すために、国家主席の座から追われていた毛沢東が仕掛け、2000万人からの犠牲者を出している。

それが利権政治における闘いへと変質していったのは、江沢民政権からだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中