「ヒュブリス」だった東京五輪が日本に残す教訓
THE TOKYO "HUBRIS" OLYMPICS
既に選手らの意識は次の五輪に向かっており、東京五輪は過去のことだ。閉会式の翌朝から、フランスのラジオで東京五輪の報道はなく、2024年のパリ五輪にシフトした。
今大会は「復興五輪」と言われたが、その面でも完全に失敗だった。報道の基本は現場で取材することだから、東北地方に行く機会もない外国のマスコミは関心がなかった。いくら橋本会長が記者会見で「復興五輪」を連呼しても、報道されない。
そもそも、パンデミックの中での復興五輪など、実現するはずもない。大会中にスポーツの取材は一度もせず医療従事者に何度も会った私にとって、2021年の東京五輪と言えば、ある看護師の言葉だ。「スポーツは大好きだが、今回の五輪をテレビで見ても素直に喜べない」
私は今大会をフランス語で「ヒュブリス五輪」と名付けたい。ヒュブリスは傲慢、自信過剰の意。「日本ならできる」「ウイルスに打ち勝つ」「問題ない」「安全だ」――そんな言葉を繰り返す日本政府の姿勢をIOCは支持し、バッハ会長もこう強調した。
「日本人は歴史を通して忍耐力を発揮してきた。このような非常に困難な状況下での五輪が可能になるのは、日本人に逆境を乗り越える能力があるからだ」
尊大な権力者がいかに社会を混乱させるかを、考えさせられた五輪だった。
(※巨大スポーツイベントの未来、ゼロリスク信奉の是非、行き場のない不安と不満......本誌9月14日号「五輪後の日本」特集では、いくつもの側面から東京五輪を振り返る)
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