政争に明け暮れる政治家に仕事をさせるには、「利益誘導型」政治が有効だ
A RARE BIPARTISAN TRIUMPH
もちろん現代貨幣理論はもう一歩先へ進み、アメリカのような国はかなり大幅に債務を累積できるとする。現代貨幣理論を持ち出すまでもなく、どんなに公的債務が膨らもうと、インフラのような国家資源に投資すれば長期的に暮らしは良くなるという社会通念がある。そこで政治家の務めは、思想的に反対の勢力に対して説得力豊かな言葉で主張することとなる。
ほかにも超党派の支持を集める方法はある。いわゆる「ポークバレル」、つまり利益誘導型の政治だ。
ポークバレルは肝心の法案には関係なさそうな条項を加えることが多いため、制度の乱用と見なされがちだが、公共財の提供を促す道具にもなり得る。頭ごなしに否定するより、法案自体が有意義かどうかを問うべきだ。そうした姿勢は、地に足の着いたリーダーシップと呼んでいいだろう。
理想の世界なら、ポークバレルは不要かもしれない。だが麻痺状態が続く米議会を見てのとおり、今のアメリカ政治は理想には程遠い。だから、今回の超党派合意は称賛すべきことだ。二大政党にも思い出してほしい。どれだけ激しく争っても、努力が報われる「合意点」があることを。
[著者]浜田宏一 KOICHI HAMADA
経済学博士、米エール大学名誉教授。内閣府経済社会総合研究所長などを経て、安倍内閣で情報提供や助言を行う内閣官房参与を務めた。近著に『21世紀の経済政策』(講談社刊)。