最新記事

気候変動

現在の気候変動は本当に危機なのか、それとも杞憂か...科学者たちの見解

CLIMATE CHANGE IS A CRISIS

2021年9月2日(木)13時41分
ヘザー・ゴールドストーン(ウッドウェル気候研究センター)、ジェームズ・テーラー(ハートランド研究所所長)

210907P42_ODS_04.jpg

ILLUSTRATION BY STEPPEUA/GETTY IMAGES

気候変動は認めるが非常事態ではない

210907P42_ODS_03.jpg
ジェームズ・テーラー(ハートランド研究所所長)

人類の文明が始まって以来のほとんどの期間、地球の気温は今よりかなり高かった。だから3万人以上の科学者が、人類は気候の緊急事態などに直面していないという意見書に署名している。

地球の歴史を通じて、大気中に滞留する二酸化炭素(CO2)の値はおよそ1000ppm前後で、現在の4200ppmよりずっと高かった。

確かに数百年、あるいは数千年前と比べれば、今のCO2濃度は上がっている。だが今の気温は、人類の文明が始まって以来の長い年月の大半に比べると低い。つまり、CO2の濃度が世界の気温を決めているわけではない。

今の地球温暖化に人間が何らかの役割を果たしている可能性は、私も認める。だが、それを絶対的な事実と言いくるめるのは、まさに論理の飛躍ではないか。

全米気象学会は学術団体として世界で唯一、この問題に関する会員全員の意見をアンケート方式で調べた。結果はどうだったか。気候変動を「どれほど心配しているか」という質問に、「非常に懸念している」と答えた会員は全体の30%にすぎなかった。

私たちは事実として、地球の緑化が進んでいることを知っている。NASAの衛星がそれを確認した。

また、主要穀物も気候変動の影響を受けず生産高がほとんどの国でほぼ毎年記録を更新していることも知っている。国連IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によると、昨今の異常気象に地球温暖化が関係しているという点に関する確信度(基礎となる科学的知見の信頼性)はとても低い。

NASAの衛星による観測で、世界中で山火事が減っていることも判明した。大気中のCO2の増加と気温の上昇がもたらす有益な影響があることも分かっている。

価格が手頃で、量も豊富なエネルギー源の存在は非常に重要だ。それこそがあらゆる経済の生命線だ。世界のほぼ全ての国で計画され、実現されているエネルギー開発計画の大半が石炭と天然ガスなのは、それが理由だ。

世界のほぼ全ての国の指導者が知性を欠いているとは思わない。彼らは愚かではない。石炭と天然ガスがエネルギー生産の主力であることには理由がある。もしも風力発電や太陽光発電が石炭や天然ガスと競える日が来たら、私も喜んで応援するが、現実はそうではない。

中国は世界の温室効果ガス排出量の30%を排出している。アメリカの排出量は14%にすぎない。20000年以降、アメリカは温室効果ガスの排出量を14%削減してきたが、世界の残りの国々の合計排出量は66%も増えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年1月以来の低水準

ワールド

アングル:コロナの次は熱波、比で再びオンライン授業

ワールド

アングル:五輪前に取り締まり強化、人であふれかえる

ビジネス

訂正-米金利先物、9月利下げ確率約78%に上昇 雇
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中